太政官日誌 明治二年 第八十六号
明治己巳 自七月廿九日 至八月十日
東京城第四十九
○七月二十九日〈己亥〉
【諸藩公用人ニ付御達ノ事】
御達書写
諸藩公用人、自今京都ニ差置ニ不及候事
但、御用有之候節、相弁ヘ候者差置、兼而其姓名可届置事
【知県事席順ノ事】
知県事席順之儀、有位ハ位順、無位ハ奉命前後ヲ以テ、被相定候事
但、権官準之候事
知県事帰県ニ付右大臣御口達書写
民者国之本也、其安不安皇運隆替之所係ニシテ、億兆父母之天職、夙夜御怵惕被遊候知県事ハ其赤子ヲ撫育スルノ重任ニ付、深ク朝廷御仁恤之御趣意ヲ宣布シ、生ヲ楽シミ業ニ安スルノ治化行届候様、勉励尽力可有之事
【杉山対軒殺害犯人死一等ヲ減ゼラル】
御沙汰書写
刑部省
此度関宿藩士井口小十郎、富山匡之助共、同藩杉山対軒ヲ及斬殺候始末、其省裁断伺出之通、於法ハ自尽当然ニ候得共、怱倉之後ヲ承ケ、時勢不得止情実ヨリ、差起候次第ニ付、兼テ被仰出候儀モ有之通、此度ハ出格之思食ヲ以テ、死一等ヲ減シ、可処寛典旨御沙汰候事
但、後例ニハ不相成候事
○八月二日〈辛丑〉
【河内、豊崎両県廃止ノ事】
御達書写
河内県
今般其県被廃候ニ付、管轄地、堺県ヘ合併被仰付候事
○ 豊崎県
右同文但シ、堺県ヲ兵庫県ニ作ル
○ 堺県
河内県被廃、其県ヘ合併被仰付候事
○ 兵庫県
豊崎県被廃〈以下同文〉
【度会県管轄地ノ事】
〇度会県
伊勢国ニ於テ、是迄笠松県、大津県、管轄之地所、以来其県管轄ニ被仰付候事
○各通 大津県
笠松県
其県、伊勢国管轄之地所、以来度会県管轄ニ被仰付候事
【隠岐県廃止ノ事】
〇隠岐県
其県被廃、大森県管轄被仰付候事
【山口藩御預ケ地ノ事】
〇日田県
山口藩ヘ御預ケ地、豊前国企救郡、以来其県管轄ニ被仰付候事
○ 大森県
山口藩ヘ御預ケ地、石見国之分〈以下同文〉
○ 山口県
其藩ヘ御預ケ地、豊前国之分日田県、石見国之分大森県管轄ニ被仰付候間、此旨相達候事
○三日〈壬寅〉
【安藤従五位、磐城平ヘ復帰ノ事】
御達書写
安藤従五位
今般格別之御詮議ヲ以テ、磐城平ヘ復帰、金七万両献納被仰付候事
○四日〈癸卯〉
【伜身代リ歎願ニ付死一等ヲ減ズル事】
御達書写
刑部省
当地八町堀亀島町繁次郎、重罪之者ニ付、可処極刑之処、忰喜太郎身代リ歎願之次第、孝心奇特之事ニ付、出格之訳ヲ以テ、死一等ヲ被宥候間、此旨相達候事
○五日〈甲辰〉
【三陸両羽磐城按察府ノ事】
御達書写
三陸、両羽、磐城按察府、岩代国白石ヘ被置候旨、被仰出候事
○七日〈丙午〉
【大臣納言家公用人ノ事】
御達書写
大臣納言家、自今公用人可置旨被仰出候事
但、人撰ヲ以テ可伺出事
○八日〈丁未〉
【国産補輔ノ建言ニ付御達】
御達書写
各通 前橋藩知事松平直克
高崎藩知事大河内輝照
館林藩知事秋元礼朝
七日市藩知事前田利昭
吉井藩知事吉井信謹
小幡藩知事松平忠恕
伊勢崎藩知事酒井忠彰
安中藩知事板倉勝殷
沼田藩知事土岐頼知
当今内外之御用途、御差支之場合体察シ、国産ヲ以テ裨輔ニ供シ度、建言之趣、奇特ニ被思食候、就而ハ諸事大蔵省ヘ打合セ、取計可致旨御沙汰候事
○十日〈己酉〉
【生野県取建ノ事】
御達書写
久美浜県
今般生野県御取建相成候ニ付、管轄地所高帳通リ、引渡可申候事
○生野県
其県管轄所、高帳之通、久美浜県ヨリ請取可申事
【府藩県楮幣返納ノ事】
民部省
先般府藩県ヘ、石高ニ応シ御貸渡相成候楮幣返納之儀ハ、東京大蔵省ニ於テ、取建相成候間、同省ヘ可相納候事
【庄内、盛岡両藩管轄ニ付御達ノ事】
〇庄内藩知事酒井忠禄
今般庄内ヘ復帰被仰付候ニ付、別紙高帳之通、其藩管轄ニ被仰付候事
○盛岡藩知事南部利恭
右同文〈庄内ヲ盛岡ニ作ル〉