太政官日誌・明治2年91号

太政官日誌 明治二年 第九十一号
明治己巳 自八月十七日 至二十日
東京城第五十四
○八月十七日〈丙辰〉
【水戸藩北海道支配地ノ事】
御達書写
水戸藩知事徳川韶武
天塩国之内
苫前郡
天塩郡
大津郡
北見国之内
麟利尻郡
右五郡、其藩支配ニ被仰付候事
○ 一関藩知事田村崇顕
胆振国之内
白老郡
右郡、其藩支配ニ被仰付候事
○ 佐嘉藩知事鍋島直大
釧路国之内
厚岸郡
釧路郡
川上郡
右三郡、其藩支配ニ被仰付候事
○ 開拓使
別紙之通被仰付候間夫々ヘ地所引渡可申事別紙三藩被仰付書同様
○十八日〈丁巳〉
【若松、福島、白石、白河、石巻、登米、胆沢、江刺、九戸、酒田ノ十県取建ノ事】
御達書写
酒田県
久保田藩、新発田藩取締之地所、今般其県支配ニ被仰付候間、知事着県之上、同藩ヨリ請取可申事
○ 各通 久保田藩
新発田藩
是迄取締之地所、今般酒田県支配ニ被仰付候間、知県事着県次第、同県ヘ引渡可申事
○ 福島県
盛岡藩元管轄地、今般其県幷白石県支配ニ被仰付以下酒田県同文
○ 白石県
右同文〈但、白石県ヲ福島県ニ作ル〉
○ 盛岡藩
其藩元管轄地、今般福島県、白石県支配ニ被仰付〈以下久保田藩同文〉
○ 胆沢県
前橋藩取締之地所、今般其県支配ニ被仰付〈以下酒田県同文〉
○ 前橋藩
是迄取締之地所、今般胆沢県支配ニ被仰付〈以下久保田藩同文〉
○ 福島県
中村藩、笠間藩取締之地所、今般其県幷白河県支配ニ被仰付〈以下酒田県同文〉
○ 白河県
右同文〈但シ、白河県ヲ福島県ニ作ル〉
○ 各通 中村藩
笠間藩
是迄取締之地所、今般福島県、白河県支配ニ被仰付〈以下久保田藩同文〉
○ 江刺県
松代藩、松本藩取締之地所、今般其県幷九戸県支配ニ被仰付〈以下酒田県同文〉
○ 九戸県
右同文但シ、九戸県ヲ江刺県ニ作ル
○ 各通 松代藩
松本藩
是迄取締之地所、今般江刺県、九戸県支配ニ被仰付〈以下久保田藩同文〉
○ 九戸県
黒羽藩取締之地所、今般其県支配ニ被仰付〈以下酒田県同文〉
○ 黒羽藩
是迄取締之地所、今般九戸県支配ニ被仰付〈以下久保田藩同文〉
○ 白河県
守山藩、三春藩取締之地所、今般其県支配ニ被仰付〈以下酒田県同文〉
○ 各通 守山藩
三春藩
是迄取締之地所、今般白河県支配ニ被仰付〈以下久保田藩同文〉
○ 石巻県
高崎藩取締之地所、今般其県支配ニ被仰付〈以下酒田県同文〉
○ 高崎藩
是迄取締之地所、今般石巻県支配ニ被仰付〈以下久保田藩同文〉
○ 胆沢県
宇都宮藩取締之地所、今般其県幷登米県支配ニ被仰付〈以下酒田県同文〉
○ 登米県
右同文〈但シ、登米県ヲ胆沢県ニ作ル〉
○ 宇都宮藩
是迄取締之地所、今般胆沢県幷登米県支配ニ被仰付〈以下久保田藩同文〉
○ 若松県
新荘藩、館林藩取締之地所、今般其県支配ニ被仰付候間、同藩ヨリ請取可申事
○ 各通 新荘藩
館林藩
是迄取締之地所、今般若松県支配ニ被仰付候間、同県ヘ引渡可申事
岩代国 若松県
同 福島県
同 白石県
磐城国 白河県
陸前国 石巻県
同 登米県
陸中国 胆沢県
同 江刺県
同 九戸県
羽後国 酒田県
右之通今般改テ新県被建置候事
民部省
別紙之通御沙汰相成候間、此旨相達候事
○十九日〈戊午〉
【徳島藩北海道支配地ノ事】
御沙汰書写
徳島藩
日高国之内、新冠郡
右一郡、其藩支配ニ被仰付候事
○ 開拓使
日高国之内、新冠郡、徳島藩支配ニ被仰付候間、土地引渡可申事
【生野県鉱山管轄ノ事】
生野権知県事
其県鉱山管轄被仰付候条司正之心得ヲ以取扱可致事
但、鉱山附属官員ハ、本司ヨリ可差出ニ付民部省ヘ可申談事
○廿日〈己未〉
【高知藩、兵部省北海道支配地ノ事】
御達書写
高知藩
石狩国之内、夕張郡
胆振国之内、勇払郡、千歳郡
右三郡、其藩支配ニ被仰付候事
○ 開拓使
石狩国之内夕張郡、胆振国之内勇払郡、千歳郡、高知藩支配ニ被仰付候間、土地引渡可申事
○ 兵部省
石狩国之内、石狩郡
後志国之内、高島郡、小樽郡
右三郡、其省支配ニ被仰付候事
○ 開拓使
石狩国之内石狩郡、後志国之内高島郡、小樽郡、兵部省支配ニ被仰付候間、土地引渡可申候事
【集議院ノ事】
各通 待詔院
集議院
待詔院下局之儀ハ、天下之材能ヲ待セラルヽ所ニシテ、言路洞開、上下壅塞之弊ナク、草莽卑賤ニ至ル迄、各抱負ヲ尽サセ、其所長ヲ御採用可被為在御趣意ヲ以テ、被設置候処、今度御詮議ニヨリ、集議院中ニ於テ、是迄待詔院下局ニテ取扱候御用等、裁判可致旨、被仰付候間、此旨可相心得候事

【集議院規則】
一、集議院中別ニ一局ヲ設ケ、天下之進言献策有用之材ヲ総ヘ、寄宿セシメ、其徳行才能ヲ考試スベキ事
一、諸藩士及農工商トモ、待詔出仕可被仰付者ハ、一応議院之考試ヲ経テ任用スベキ事
但、人物ニヨリ特命之撰挙ハ此限ニ非ス
一、議院ニ関係之議事アル節ハ、長官、次官判官、正権トモ、太政官ニ参預可致事
一、議員中ヨリ幹事十二名ヲ公撰シ、正権判官ニ準シ、可相勤事
但、権判官之次席タルベク候
一、議員中ヨリ、名指シ撰挙有之節ハ、議院ニ於テ、長官、次官、正権判官、幹事等、其材能可否ヲ熟議之上、可申出事
但任用之官等職務トモ前以内諭可有之事
一、議員中名指ナク、挙任被仰出候節ハ、長官、次官、正権判官、幹事等二名ヲ撰定シテ、可伺出事
一、議員中ヨリ撰挙之節ハ、奏任以上ニ可相任事

建言之輩、是迄待詔院ヘ罷出候処、自今集議院ヘ参上可致事