太政官日誌・明治2年10号

太政官日誌 明治二年 第十号
明治己巳 自正月廿四日 至廿八日
○正月二十四日〈丙申〉
【池田中将版籍奉還ニ付上表ノ事】
池田中将上表写
薩長肥土四藩、版籍朝廷ヘ奉返上度旨、及出願候趣、昨今伝承仕候、右ハ全慶徳兼テ之素志ニ有之候処、不図四藩及先発候儀、本懐之至奉存候、仍テハ慶徳ニ於テモ、同様二州版籍奉返上度奉存候、此段可然御執奏可被下候、以上
正月
慶徳
弁事御中
○二十五日〈丁酉〉
【御誓約被仰出面々】
松平少将
山内少将
大河内刑部大輔
関伊勢守
牧野豊前守
戸田淡路守
谷大膳亮
本多肥前守
脇坂淡路守
織田摂津守
柳生但馬守
片桐主膳正
浅野近江守
蒔田相模守
永井信濃守
真田信濃守
戸田采女正
稲垣対馬守
木下鐓次郎
山崎寿丸
鍋島欽八郎
松浦豊太郎
【大宮御移徙参賀ノ事】
御布告書写
宮堂上ヘ
来月十一日大宮御方新殿御移徙行啓ニ付当日禁中大宮御所中宮御所ヘ参賀之事
但、不及献物候事
大宮御所ニ於テハ、巳刻迄ニ必参賀之事重服之輩、翌十二日参賀之事
○ 諸侯ヘ
来月十一日大宮御方新殿御移徙云々同前
但、不及献物云々大宮御所ニ於テハ云々在国在邑之諸侯重臣ヲ以テ、御仮建所ニ於テ恐悦可申上事
重服之輩云々同前
○ 五等官以上徴士ヘ
来月十一日大宮御方云々同前
但、不及献物云々大宮御所ニ於テハ云々衣体之儀ハ、三等官以上、衣冠直垂可為勝手、四等、五等官ハ直垂之事
重服之輩云々同前
【御沙汰書写】
○版籍奉還上表ニ付池田中将ヘ御沙汰ノ事
池田中将
今度土地人民版籍奉還可致之旨、申出候条、全忠誠之志、深叡感被思食云々
以下第九号、長薩肥土四藩ヘ御沙汰書同文
○西園寺、前原ヘ新潟出向ノ御沙汰
西園寺中納言
新潟府知事被仰付置候通、早々彼地ヘ罷下府政取計可有之旨、重テ御沙汰候事
○ 前原五位
新潟府判事被仰付置候通、早々府政取計可致旨、重テ御沙汰候事
○橋本中将上京ノ御沙汰
橋本中将
御用有之候間、早々上京可致旨、被仰出候事
○岩倉卿任叙ノ事
右兵衛督
大納言大将極位宣下之儀、昨年来屡御沙汰有之候得共、再三固辞ニ依リ、権大納言正二位推任叙宣下候事
○ 同人ヘ
任権大納言叙正二位
右宣下候事
○西尾土佐守推叙ノ事
西尾土佐守
年来御執匕勤労不少候処、今度病気及大切候趣被聞召、格別之以思食、従四位下推叙被宣下候事
但、必不可為後例候事
○ 同人ヘ
叙従四位下
右宣下候事
○二十七日〈己亥〉
御楽始
【佐土原藩版籍返上々表ノ事】
佐土原藩上表写
臣忠寛頓首頓首謹言臣宗藩島津忠義等、上表シ侯伯之封土、皆幕府ノ私与攘奪之余ニシテ朝権賜与之正ニ非ス、名分之乱、大体之虧、是ヨリ太甚ハナシ、方今大政一新、急務此ニ存ス、故ニ自ラ先テ、其版籍ヲ上リ、朝廷宜ク大体ヲ正シ玉ハン事ヲ乞フ、議論公平事理切当、亦無遺感臣窃ニ其説ヲ聞キ、深ク其義ニ伏ス、因テ謹テ版籍ヲ上リ、亦忠義等表ノ如シ臣区々懇冀之至ニ勝エス、伏テ聖照ヲ乞フ、臣誠恐誠惶再拝白
正月
島津淡路守
【御沙汰書写】
○高木弾正養子ノ事
加藤能登守
高木弾正儀、実子無之ニ付、其方弟賢次郎養子ニ差遺度願之通、被聞食届候事
○ 高木弾正
其方儀実子無之ニ付、加藤能登守弟賢次郎、致養子度願之通被聞食届候事
○徳川大納言ヘ上京ノ御沙汰
徳川大納言
御用之儀有之、早々上京可致旨、被仰出候事
○上京諸家ヘ滞京ノ御沙汰
細川中将
浅野新少将
酒井雅楽頭
松平讃岐守
真田信濃守
本多肥前守
本多平八郎
鍋島欽八郎
松浦豊太郎
今般致上京候段、御満足ニ被思食候、然ル処、列藩来ル四月中旬限、東京ヘ罷下候様、被仰出候ニ付、速ニ御暇ヲ可賜之処、御模様有之、乍太義、東京御出輦迄、滞京可致旨被仰出候事
○上京諸家賜暇ノ事
吉川駿河守
分部掃部助
土方大和守
松平左兵衛督
戸田淡路守
織田摂津守
戸田采女正
植村羽前守
脇坂淡路守
蒔田相模守
内藤志摩守
安藤飛弾守
間部下総守
森越後守
木下鐓次郎
市橋下総守
大河内刑部大輔
谷大膳亮
昨年来度々致上京候段、御満足ニ被思食候尚来三月御再幸、諸侯東京ヘ被為召候ニ付テハ、在京之面々一先帰邑御暇ヲ賜候旨、被仰出候事
但、来ル四月中旬、東下被仰付候ニ付テハ、右期限迄滞京致シ、当地ヨリ直ニ東下致度向ハ可為勝手事

島津淡路守
大沢右京大夫
山崎寿丸
牧野豊前守
松平瑶彩麿
関伊勢守
堀長門守
浅野近江守
伊達締之助
前田多慶若
稲垣対馬守
一柳因幡守
本多竹僊
今般致上京候段、劬労ニ被思食候、尚来三月御再幸云々以下前同文
但、来四月中旬云々以下前同文
○二十八日〈庚子〉
【御沙汰書写】
○外国ヘ使節差遺ノ事
東久世中将
西洋各国ヘ為使節被遺候旨、兼テ被仰付置候処、弥当年被遺候御治定相成候ニ付、此段更ニ被仰出候事
○版籍奉還上表ニ付御沙汰ノ事
島津淡路守
今度土地人民、版籍奉還可致之旨、云々
池田中将ヘ御沙汰書同文
○久美浜県警衛被免ノ事
小出大和守
小出播摩守
牧相模守
其方共儀昨年来、丹後久美浜県警衛申付有之引続出精兵隊取立等行届候条、奇特之事ニ候今般東北平定、追々御静謐ニ付テハ、久美浜県警衛之儀、一先被免候、将又先般東京定府之儀ニ付、歎願之趣、従久美浜県申立有之、東下之儀ハ御猶予被仰付候間、京都表ヘ罷出可申候、尤御用之儀ハ追テ何分之御沙汰可有之旨、被仰出候事