明治元年119号

太政官日誌第百十九
明治紀元戊辰冬十月

松代藩、北越戦記写 其四
一、七月二十九日 官軍大勝、長岡城ヲ復ス初廿五日ノ変、我兵憤怒ニ堪ヘス、本日黎明薩長両藩共ニ妙見口ヨリ進撃ス、於是躍起シ乃路ヲ分ツテ、三番小隊ハ本道ヨリシ、六番八番ノ狙撃隊ハ川辺ヨリス、長兵先ツ賊ヲ破リ、水梨村ニ至リ、我狙撃隊ハ笹花村ヨリ、中島ニ到リ、賊ヲ破リ、長州ノ兵ト会シ、左近村ニ転ス、賊徒予シメ砲台ヲ設ケ勁拒ス、乃共ニ之ヲ撃チ、薩兵来援、然ルニ鋭進深入ノ故ヲ以テ、賊兵我背後ニ出ルヲ慮リ、我兵ヲシテ又川辺ニ行、賊塁エ向ツテ撃進セシム薩兵復来会ス、此時川西大島口ニ在ル官軍妙見口ノ進撃勝ニ乗シ、已ニ長岡エ逼ルヲ見加州ノ兵一小隊、川ヲ渡リ来会ス、於是議シ薩兵ヲ以テ川辺ヲ警備シ、我兵朝餉未タ終ラス、長兵方ニ苦戦スト聞キ、投筋シテ赴援ス賊兵拒ク能ハス、塁ヲ棄テ走ル、則長兵ト共ニ尾撃ス、時ニ本道ノ 官軍苦戦ノ報アリ、又長兵ト共ニ赴援ス、已ニシテ川西ニアル我兵、大砲一門並各藩ノ兵、続キテ水ヲ渡ル、我狙撃隊弥進、賊ト戦ヒ、遂ニ草生津口ヨリ先登長岡エ入リ、城門外ニ到ル、賊已ニ城中ニ放火シテ逃ル、則城ニ入ラズ、直チニ賊ヲ追撃、市外北口ニ到リ、三番小隊ト遇フ、先是三番小隊ハ、今朝本道ヨリ進ミ、十日町ニ到レハ、賊已ニ逃ル、則急追シ、路ニ薩長ノ兵ト会シ、宮内村ニ入ル、賊徒宮原村二砲台ヲ設ケ、大小砲ヲ連発シ、死ヲ以テ拒守ス、勢尤悍強ナリ、我兵直ニ逼ツテ、前面ノ溝中ニ散布シ、烈シク狙撃ヲナス、士卒半身水ニ没シ、刻苦激戦、一時半余、頗飢労スト雖、午餉スルニ遑アラス、加ルニ銃筒熱シテ火ノ如シ、互ニ水ニ点シテ装発ス、賊終ニ砲台ヲ棄敗走、則其塁ヲ取リ、急転別処ニ向ヒ、賊ノ側面ヲ撃、又其塁ヲ取ル、長州ノ兵亦突進シテ、本道ノ賊ヲ破ル、乃相共ニ城ニ入ラントス、然ルニ城外追撃ノ兵寡キヲ慮リ、更ニ城下ノ賊ヲ蒐リ、遂ニ狙撃隊ニ会ス、已ニシテ蔵王村辺ニ当リ砲声アリ、乃共ニ進ンテ石内村ニ入ル、賊徒已ニ下条村ニ走ルト聞キ、再ヒ長州ノ兵ト会シ、共ニ掃撃シテ池之島村ニ到リ、翌八月朔、北ルヲ追フテ見附駅エ進軍ス、今日之戦、妙見口ノ官軍ニ始リ、各所ノ官軍期セスシテ赴キ、駢進協撃、一時ニ城ヲ復シ、賊ヲ屠リ、挙国ノ平定日ヲ期シテ待ヘシ、実ニ大快事ト謂ヘキ哉<我死傷殺獲別記ス>
○閏四月廿六日、魚沼郡雪嶺ヨリ、五月十四日、古志郡榎峠前山ノ戦ニ至ル迄、各所ニ於テ死傷人員、先般御届済ノ分除ク
五月十五日、於三島郡高梨村
傷 安藤民部
同十八日、於同所
傷 佐野左兵衛
同廿八日、於三島郡与板原村
傷 五番小隊 小野小十郎
同廿九日、於同所
傷 林栄之進 前島七良家来 宮下銀平
六月朔日、於同所
傷 杉田芳太郎
同日、於与板陣ケ峰
傷 六番小隊 野沢常治
死 弾薬運夫 末吉
同日、於蒲原郡赤坂嶺
死 兵糧運夫 儀市
傷 弾薬運夫 千代蔵
同二日、於与板陣ケ峰
傷 六番小隊 轟喜十郎
同五日、於同所
死 弾薬運夫 甚左衛門
同八日、於古志郡比礼嶺
傷 四番小隊司令官 山越新八郎
同日、於同郡盛立嶺
傷 大砲方附属 宮下甚吾
同九日、於与板原村
傷 五番小隊司令官 牧野大右衛門
同十二日、於出雲崎口久田村
傷 増田 将曹<後死ス> 渡辺憲蔵
金児友太郎家来 峰村伊兵衛 人夫 常右衛門
死 二番小隊 小林源之助
同十四日、於与板原村
傷 五番小隊 北沢千代蔵
同十五日、於古志郡栃窪嶺
傷 金井鉄之進 弾薬運夫 文吉
同廿二日、於同郡半蔵金村
傷 軍監 篠崎源五郎 八田嘉吉
一番小隊 山中文太 同 村沢高五郎<後死ス>
同 中沢初治 同 岡田多之助
弾薬運夫 嘉吉
七月朔日、於比礼
傷 四番小隊 中村芳三郎 同 笠井富蔵
同日、於古志郡亀崎
死 大砲方附属 春原孫左衛門
同日、於出雲崎口御経塚
傷 二番小隊 西村岩次郎
同三日、於同所
死 同 中曽根良作
傷 同 中川八十五郎 弾薬運夫 祖左衛門
弾薬運夫 文吉 人夫 仁兵衛
同日、於比礼嶺
傷 四番小隊 越坂喜十郎
同日、於与板原村
傷 兵糧運夫 民弥
同四日、於古志郡天狗沢
傷 一番小隊 高木重作
同五日、於出雲崎口御経塚
死 二番小隊 小林孝太郎
同六日、於与板原村

五番小隊 浅井徳三郎 同 岡沢要之助<後死ス>
同日、於荷頃口陣ケ峰
死 一番小隊 佐々木作治
同七日、於荷頃村口
傷 小泉浅右衛門
同十一日、於同所
傷 兵糧運夫 磯右衛門
同十九日、於与板原村
傷 大日方孫三郎
同廿二日、於亀崎
傷<後死ス> 古川嘉栄治
同廿五日、於長岡蔵王口

佐川彦之亟 松村作右衛門
山本直次郎

六番狙撃隊番頭 海野寛男 八番狙撃隊番頭 小幡助市
軍監 前田角次郎 樋口覚男
海沼忠蔵<後死ス> 小山新蔵 同
海野寛男家来 飯島安次郎 小幡助市家来 小林助作
弾薬運夫 長次郎
同日、於長岡草生津口

小山謙三郎 大砲方附属 飯島菊治
同日、於長岡四郎丸口

小荷駄方附属 粟林吉弥 同 八町源蔵
丸山五郎八
同日、於与板原村
死 森山熊之助
傷 高井栄治
同日、於亀崎
死 軍監 西山良助

伊藤荘吉 三番小隊 滝沢島蔵
器械方附属 長井定治郎 兵糧運夫 金左衛門
同廿六日、於同所
傷<後死ス> 三番小隊 吉沢豊三郎
同日、於比礼嶺途中
傷 同 五明栄八
同日、於上稲干場
傷 斎藤亀作 弾薬運夫 理作
同日、於与板口三楯山
死 五番小隊 字敷恒右衛門
同廿九日、於長岡口
死 三番小隊司令官加勢 祢津千馬之助
傷 島津左織 三番小隊 竹内伊太郎
同 永井芳太郎
同日、於筒場村
傷 軍監附属 小池乙司
以上八拾四人