太政官日誌・明治2年35号

太政官日誌 明治二年 第卅五号
明治己巳 自三月八日 至十四日
○三月八日〈庚辰〉
【御留守御静謐伺ノ事】
御沙汰書写
各通 藤堂大学頭
池田武蔵守
酒井雅楽頭
本多中務大輔
其藩々申合セ、御留守中為伺御静謐、一ケ月三度、一人宛弁事ヘ可罷出事
【塚原温泉外人入浴見合ノ事】
長崎府
肥前国塚原温泉、外国人入浴之儀ハ、近日、御東幸御評議之上、可被及御沙汰候間、夫迄相見合可申事
○九日〈辛巳〉
【聴訟断獄ニ付御沙汰ノ事】
御沙汰書写
府県ヘ
諸府県知事、判事之内申合セ、四月中旬迄ニ東京ヘ可罷出候ニ付テハ、兼テ御布令ニ相成候施政順序ニ基キ、各見込相立、聴訟断獄之義ハ、当分旧貫ニ依リ候様、被仰出候得共既ニ徒刑ヲ設ケ、火刑ヲ被廃候義モ有之候ニ付、府県ニ於テ、是迄取扱来候体裁情実等、明細書記シ、東下之節持参可致候事
【出征諸隊ヘ御沙汰ノ事】
毛利宰相中将兵隊 創傷之者
中島初之進
小倉勝之助
祖式半輔
石津範次郎
沓屋衛門
松田虎之輔
森政松之進
吉岡正人
吉滝直蔵
波多権十郎
藤村幾太郎
山村福次郎
河村久吉
野村幸三郎
藤井忠一
真田五郎
尾崎梅之助
外ニ小者一人
征討出張、遠路跋渉、日夜攻撃、遂被重創云々〈辰十一月七日、柳河藩兵隊ヘ御沙汰書同文〉
小笠原豊千代丸 兵隊
征討出張、遠路跋渉、其労不少候、云々
第十九号、同藩兵隊ヘ御沙汰書同文
【銅ノ輸出御差許ノ事】
御布告写
従来外国人ニテ、銅輸出之儀、政府入札之外ハ、堅ク御禁止之処、今度他品同様、五歩税ニテ輸出可致様、御差許ニ相成候ニ付テハ、向後御国内商人共、銅売買之儀、可為勝手旨被仰出候事
○十日〈壬午〉
【御東幸御留守御警衛ノ事】
御沙汰書写
京都府
御東幸御留守中、京地御警衛向、諸藩ヘ被仰付候ヘ共、元来都下取締方之儀ハ、其府之専務ニ付、別而厳重可取計候、就テハ、兼テ取立有之平安隊之者共、其旨篤ト相心得、紀律厳粛、無懈怠、警衛可致様御沙汰候事
【神宮御参拝恐悦ノ事】
三等官以上徴士
神宮御参拝被為済候恐悦トシテ、来ル十二日参朝可有之候事
但、其官々申合セ、一人宛可罷出候事
○ 在京諸侯
神宮御参拝被為済候恐悦トシテ、来ル十二日参朝可有之候事
但、大宮御所中宮御所ヘハ不及罷出候、尢所労之節ハ、名代トシテ重臣差出可申、重服之輩ハ不及其儀事
【終身扶持下賜ノ事】
藤井九成
積年報国之志、神妙之至ニ候、依之八人扶持終身下賜候事

右同文
各通 八人扶持 平川和太郎
六人扶持 玉川壮吉
同 海部閑六
同 原保太郎
四人扶持 荒木尚一
五人扶持 岩崎筑前介
同 淡海筑前介
三人扶持 海野貞斉
同 藤井少進
同 井上謙三
六人扶持 長谷川鉄之進
同 沢田真造
沢田真太郎
三人扶持 熊谷久右衛門
同 池村久兵衛
六人扶持 植田宗平
四人扶持 山口兵部
【大島汐岬ヘ灯台取建ノ事】
徳川中納言
今般其藩国内、大島汐岬ヘ、灯明台御取建相成候ニ付テハ、右掛リ役々並御雇英国人罷越候間、諸事申談、不都合無之様可致旨御沙汰候事
【御留守中京地御警衛ノ事】
毛利宰相中将
今般御東幸御留守中、当分其藩京地御警衛被仰付候間、非常之節ハ不及申、平素諸取締向、至重之儀ニ付、一入厳粛可取計旨御沙汰候事
但、兵数之儀ハ、一大隊相備可申事
○ 島津少将
右同文当分ノ二字ナシ
但、兵数之儀ハ、三小隊相備可申事
【竹越兵部少輔蟄居被免ノ事】
竹腰伊予守
其方同姓兵部少輔儀、昨年蟄居被仰付置候処、追々歎願之趣モ有之ニ付、今般出格之思食ヲ以、蟄居被免候旨御沙汰候事
○ 竹腰兵部少輔
其方儀、今般出格之御憐愍ヲ以、蟄居被免候間、国務ハ勿論、伊予守家事一切関係不致様御沙汰候事
○十二日〈甲申〉
【若王子遠文ヘ御沙汰替ノ事】
御沙汰書写
若王子遠文
先般海軍参謀御用ニ付、復飾被仰付候処、今度寺務ヲ離レ、山科家庶流ヲ以、新ニ堂上ニ被加候事
○ 同人ヘ
為家禄三十石三人扶持、下賜候事
右二月十九日御沙汰之処、御取替ニ相成候也
【通用停止ノ銀目ニ付御布告】
御布告写
通用停止ノ銀目ヲ以テ、金銭之価ヲ定候理ハ無之筈ニ候処、下方ニ於テ、私ニ金銭之相場ヲ立候哉ニ相聞、如何之事ニ付、爾来右等之儀、一切無之様、堅ク可相心得候事
【風儀取締ニ付御沙汰ノ事】
百姓町人之妻娘、風儀不宜者、間々有之、今般京府ヨリ、厳敷申達候処、宮堂上諸藩並社寺等之家来、兵卒共、農商之家ニ立入、用向ニ事寄、婦女ヲ勾引シ、或ハ威力ヲ以淫リケ間敷振廻致シ候者モ有之哉ニ相聞、以之外ノ事ニ候、向後右不所業之儀無之様、其主人々々ヨリ、厳重可申付候、若シ心得違之輩於有之ハ、屹度御取糾可被及御沙汰候間、此旨兼テ可相心得候事
○十三日〈乙酉〉
【諸藩聞役帰邑ノ御沙汰】
御沙汰書写
長崎府
従来諸藩ヨリ、聞役ト称シ、其府下ヘ出張之者有之候趣、右ハ現今官府ニ於テ、別ニ御用関係ノ儀モ無之ニ付、各帰邑可致様、従其府可相達事
○十四日〈丙戍〉
【池田隊ヘ御沙汰ノ事】
御沙汰書写
池田備前守兵隊
征討出張、遠路跋渉、其労不少候、云々同上
【中川修理大夫国向取締被免ノ事】
中川修理大夫
国向取締被仰付置候処、被免候事
【十津川郷巡察ノ事】
大原中納言
以当官、十津川郷巡察トシテ出張朝廷御旨意之趣、篤ク説諭ニ可及様、被仰付候事
但、園池少将並渡辺昇ヘ諸事可申合事
○ 園池少将
今般十津川郷巡察トシテ出張朝廷御旨意之趣、篤ク説諭ニ可及様、被仰付候事
但、大原中納言並ニ渡辺昇、巡察トシテ出張被仰付候間、右両人ヘ諸事可申合事
○ 渡辺昇
以当官、大原中納言、園池少将ニ相副、十津川郷巡察トシテ出張朝廷御旨意之趣、篤ク説諭ニ可及様、被仰付候事
○ 玉手鎮次郎
以当官、大原中納言随従、十津川郷ヘ出張被仰付候事
校正
第十六号、七葉後面、御布告写ニ、新貨弊トアルハ、新貨幣ノ謬リ也
第廿一号、八葉前面、若王寺ハ若王子ノ誤リ也
第廿四号、五葉前面、植松大夫トアルハ、植松右京権大夫也
第卅号、一葉前面ノ島津侍従ハ、島津中将ノ誤ナリ