太政官日誌・明治2年109号

太政官日誌 明治二年 第百九号
明治己巳 自十二月二日 至七日
東京城第七十二
○十二月二日〈己亥〉
【士族禄制御定ノ事】
御布告写
一、先般各藩大義名分之紊壊ヲ正シ、海外諸国之形勢ヲ察シ、以テ其封土ヲ奉還ス、依テ大ニ公論衆議ヲ被為尽、府藩県一途之政令ニ帰シ、天下ト共ニ綱紀ヲ更張被遊度御主意ニ付、更ニ知藩事ニ被任、随而家禄之制被為定、藩々ニ於而モ維新之御政体ニ基キ、追々改正可致、就而者中下大夫士以下之称被廃、都テ士族及卒ト称、禄制被相定候、爾後各其地方官ニ於テ、可為貫属旨被仰出候条、篤ト御主意ヲ奉体シ、銘々分ヲ守リ、其職ヲ可尽候事
但、知行所一同上地被仰付、総テ廩米ヲ以テ賜候事
一、大夫士以下之面々、今般家禄御定相成候ニ付而者、其家来共三代以上相恩之者ハ、相応之御扶助可被下候間、姓名幷ニ従前之禄、扶持米等取調、早々可申出事
但旧主ニ於テ扶持致シ候儀ハ可為勝手事規則
一、禄制二十一等ニ分チ、士族ハ十八等ニ止候事
但、士族ノ元高十三石ニ満タス、卒ノ元高八石ニ満サル者ハ、是迄通之事
一、元禄ハ現今被宛行候高ヲ以テ定候事
一、旧来同心之輩ハ、卒ト可称事
一、禄制ハ総テ現石高ヲ可称事
一、禄制当年ハ是迄之通、来春ヨリ可減事
一、禄ハ都而廩米ニテ賜候間、其触頭ニテ取糾、大蔵省ヘ可申出事
禄制
一、元禄万石未満九千石迄 現米 二百五十石
一、同九千石未満八千石迄 二百二十五石
一、同八千石未満七千石迄 二百石
一、同七千石未満六千石迄 百七十五石
一、同六千石未満五千石迄 百五十石
一、同五千石未満四千石迄 百三十五石
一、同四千石未満三千石迄 百二十石
一、同三千石未満二千石迄 百五石
一、同二千石未満千五百石迄 九十石
一、同千五百石未満千石迄 七十五石
一、同千石未満八百石迄 六十五石
一、同八百石未満六百石迄 五十五石
一、同六百石未満四百石迄 四十五石
一、同四百石未満三百石迄 三十五石
一、同三百石未満二百石迄 二十八石
一、同二百石未満百五十石迄 二十二石
一、同百五十石未満百石迄 十六石
一、同百石未満八十石迄 十三石
一、同八十石未満六十石迄 十一石
一、同六十石未満四十石迄 九石
一、同四十石未満三十石迄 八石
一、同三十石以下 是迄之通
但、免二ツ五分、四捨五入之法ヲ以テ、斗ニ切上ケ可申事以上
御沙汰書写
京都府
東京府
今般士族之面々、別紙之通被仰付、其府管内ニ有之分ハ、総テ可為貫属旨、被仰出候間、此段相達候事
○ 府県
右同文
○ 民部省
今般士族之面々、別紙之通被仰付候間、大阪府幷諸県、其省ヨリ相達可申候事
○ 大蔵省
今般士族之面々、別紙之通被仰付候条、為心得相達候事
【東京在留諸藩士等公事出入ノ事】
御布告写
諸官幷宮、華族之家士及諸藩士等、東京在留之向、東京府下ヘ相関リ候公事出入有之節、以来東京府ヨリ其主長ヘ一応掛合之上、本人直ニ呼出シ、取捌候間、此旨兼テ相心得可申事
但、諸官員之儀ハ、奏任以上ハ家来、判任以下ハ本人呼出候事
御沙汰書写
東京府
別紙之通、御布令相成候間、為心得相達候事
【鳥取藩北海道支配地ノ事】
〇鳥取藩
後志国島牧郡之内
会所元ヨリ南之方シツキ境迄
但、会所相属
右其藩支配被仰付候事
(14行分摺り消し)

○三日〈庚子〉
【近藤外三家領地奉還ノ事】
御沙汰書写
元中大夫 近藤用虎
足利木久麿
元下大夫 秋月二郎
元上士 児島孫七郎
今般領地奉還之儀、神妙ニ被思食、言上之通被聞食候事
【村上藩士御預ノ事】
〇村上藩
其藩士
鳥居与一右衛門
水谷孫平治
近藤幸次郎
平井伴右衛門
高橋佐治右衛門
右之者共、和歌山藩ヘ御預被仰付候間、引渡可申事
○和歌山藩
別紙名前之者、其藩ヘ御預被仰付候事
但、受取方ハ、村上藩ヘ打合可申事
別紙ハ村上藩士名前ナリ
【三根山藩土地替ノ事】
〇三根山藩
其藩支配地、今般土地替被仰出候処、更ニ御詮議之次第有之、御差止相成、込高之内五百石被召上候間、越後国蒲原郡平野幷ニ下山村之内ニテ上地、水原県ヘ引渡可申事
【仏光寺北海道支配地ノ事】
〇仏光寺
後志国島牧郡之内
運上屋元ヨリ東ノ方ヱカエチシ迄
右地所支配被仰付、将又石狩国札幌、空知両郡之内ヘモ、便宜之土地開拓相成候様、尽力可致事
○五日〈壬寅〉
按察使ヘ御沙汰書写
民政ハ治国之大本、至重之事トス、御一新以来、専ラ億兆其所ヲ得テ、生業勉励候様トノ御趣意之処、越後全国之儀ハ、去年兵馬之衢ト成リ、加之地方官屡変換、諸藩之情状未タ区々モ有之哉ニ相聞ヘ、彼是下民安堵ニ至ラス、実ニ北方之動静ニ相係リ候儀ニ付、今般当分按察使兼勤被仰付候ニ付テハ、藩県之政績ヲ熟察シ、地方官ト戮力協心御趣意ヲ奉体シ、専ラ布政施治ノ道ヲ尽シ、上下之情ヲ貫通セシム可ク候事
右大臣
【府藩県ノ楮幣製造禁止ノ事】
御布告書写
先般御布告有之候通、追テ新貨幣御鋳造、御国内金銀貨幣御改正、昨年御施行之楮幣ハ、追々御引替可相成儀ニ付、諸藩ニ於テ、旧幕府ヨリ許可ヲ受、従前製造之楮幣、以来其数ヲ増益致シ候儀、厳禁被仰出候間、是迄製造惣高調、来午ノ二月中迄ニ、大蔵省ヘ可届出候、且御一新後、府藩県ニ於テ、楮幣製造之向ハ、以来通用停止被仰出候間、此段相達候事
但、製造無之府藩県ハ、其趣早々同省ヘ可届出事
○七日〈甲辰〉
【松平容保御預替ノ事】
御沙汰書写
鳥取藩
松平容保儀、今般和歌山藩ヘ御預替被仰付候間、引渡可申事
○和歌山藩
松平容保儀、其藩ヘ御預被仰付候事
但、鳥取藩ヨリ早々受取可申事
【水原県兵隊引渡ノ事】
〇水原県
其県管轄之兵隊、三十五歳以下之者、兵部省ヘ引渡可申、三十五歳以上之者ハ、相応之手当差遣シ、帰籍可申付事
○ 兵部省
今般水原県兵隊、引渡候ニ付、於其省管轄可致事

兵隊六小隊、水原県ヘ出張可申付候事