太政官日誌 明治二年 第百二号
明治己巳 自九月廿六日 至廿七日
東京城第六十五
○九月廿六日〈甲午〉
賞典録
詔書写
朕惟、皇道復古、朝憲維新、一資汝有衆之力朕切嘉奨之、乃頒賜、以酬有功、汝有衆勗哉
明治二年己巳九月廿六日
詔二通
【○三条公ヘ】
汝実美、皇道ノ衰運ニ際シ、夙ニ恢復ノ業ヲ期ス、竟ニ躬天下ノ重ヲ係ケ、出テハ則鎮将入テハ則輔相、能中興ノ業ヲ成ス、洵ニ国ノ柱石、朕ノ股肱、朕切ニ厥偉勲ヲ嘉ミス、乃チ賞賜シテ厥労ニ酬ユ、吁将来輔導益望ムコトアリ、汝実美其懋哉
○【岩倉公ヘ】
汝具視、皇道ノ衰ヲ憂ヒ、大ニ恢復ノ志ヲ抱ク、竟ニ太政復古ノ基業ヲ輔ケ、躬ヲ以テ天下ノ重ニ任シ、夙夜励精、規画図治、以テ中興ノ業ヲ成ス、洵ニ国ノ柱石、朕ノ股肱、朕切ニ厥偉勲ヲ嘉ミス、乃チ賞賜シテ厥労ニ酬ユ、吁将来輔導益望ムコトアリ、汝具視其懋哉
○ 従一位藤原朝臣実美
高五千石
依偉勲永世下賜候事
明治太政二年官印己巳九月
○ 正二位源朝臣具視
高五千石
依偉勲永世下賜候事
年号干支月日略之、以下同シ
○ 中山従一位忠能
皇道委靡、満朝危疑ノ日ニ当リ、断然回復ノ策ヲ賛シ、竟ニ中興ノ大業ヲ輔ケ候段叡感不斜、仍賞其勲労、禄千五百石下賜候事
○ 従一位藤原朝臣忠能
高千五百石
依勲労永世下賜候事
○ 中御門従二位経之
皇道委靡、満朝危疑ノ日ニ当リ、断然回復ノ策ヲ賛シ、竟ニ中興ノ大業ヲ輔ケ候段叡感不斜、仍賞其勲労、禄千五百石下賜候事
○ 従二位藤原朝臣経之
高千五百石
依勲労永世下賜候事
○ 正親町三条正二位実愛
皇道衰頽ノ時ニ当リ、回復ノ志ヲ抱キ、竟ニ中興ノ大業ヲ輔ケ候段叡感不斜、仍賞其勲労、禄千石下賜候事
○ 正二位藤原朝臣実愛
高千石
依勲労永世下賜候事
○ 大原従二位重徳
積年皇道ノ衰ヲ憂ヒ、丁卯之冬、大政復古ノ時ニ方リ、日夜励精、老而益壮、力ヲ皇室ニ尽シ、以テ今日ノ丕績ヲ賛ケ候段叡感不斜、仍賞其勲労、禄千石下賜候事
○ 従二位源朝臣重徳
高千石
依勲労永世下賜候事
○ 東久世正四位通禧
皇道ノ衰ヲ憂ヒ、夙ニ恢復ノ志ヲ抱ク、竟ニ中興ノ時ニ際シ、日夜励精、以テ今日ノ丕績ヲ賛ケ候段叡感不斜、仍賞其勲労、禄千石下賜候事
○ 正四位源朝臣通禧
高千石
依勲労永世下賜候事
○ 沢従三位宣嘉
皇道ノ衰ヲ憂ヒ、夙ニ恢復ノ志ヲ抱ク、竟ニ中興ノ時ニ際シ、日夜励精、事務鞅掌候段叡感不斜、仍賞其勲労、禄八百石下賜候事
○ 従三位清原朝臣宣嘉
高八百石
依勲労永世下賜候事
○ 伊達従二位宗城
積年力ヲ皇室ニ尽シ、丁卯之冬、大政復古之時ニ方リ、速ニ上京、今日ノ丕績ヲ助ケ候段叡感不斜、仍賞其功労、禄千五百石下賜候事
○ 従二位藤原朝臣宗城
高千五百石
依功労終身下賜候事
○ 山内従二位豊信
丁卯之冬、大政帰朝ノ議ヲ建、鞠躬尽力、遂ニ成功ヲ奏候段、叡感不斜、仍賞其功労、位階一等ヲ進メ、禄五千石下賜候事
○
天皇御璽
従二位藤原朝臣豊信
叙正二位
右大臣従一位藤原朝臣実美宣
大弁従三位藤原朝臣俊政奉行
天皇
明治二年己巳九月廿六日
御璽
○ 従二位藤原朝臣豊信
高五千石
依功労終身下賜候事
○ 徳川正二位慶勝
大政復古ノ際ニ当リ勅ヲ奉シテ、力ヲ皇室ニ尽シ、以テ今日ノ続ヲ賛成候段叡感不斜、仍賞其功労、位階一級ヲ被進候事
○
天皇御璽
正二位源朝臣慶勝
叙従一位
右大臣従一位藤原朝臣実美宣
大弁従三位藤原朝臣俊政奉行
年号干支月日略之、以下同シ
○ 各通 松平従二位慶永
浅野従二位長勲
前同文
正二位宣下
○ 成瀬従五位正肥
太政復古ノ際ニ方リ、断然一藩ヲ助ケ、力ヲ皇室ニ尽シ候段叡感不浅、仍賞其功労、位階一級ヲ進メ、禄五百石下賜候事
○
太政官印
従五位藤原朝臣正肥
叙正五位
右大臣従一位藤原朝臣実美宣
大弁従三位藤原朝臣俊政奉行
○ 従五位藤原朝臣正肥
高五百石
依功労永世下賜候事
○ 木戸従四位孝允
積年心ヲ皇室ニ尽ス、戊辰ノ春大政ニ預参シ、夙夜励精、献替規画、以テ中興ノ鴻業ヲ賛成候段叡感不斜、仍賞其勲労、位階ヲ進メ、禄千八百石下賜候事
○ 従四位大江朝臣孝允
叙従三位
右大臣従一位藤原朝臣実美宣
大弁従三位藤原朝臣俊政奉行
○ 従四位大江朝臣孝允
高千八百石
依勲労永世下賜候事
○ 大久保従四位利通
積年心ヲ皇室ニ尽ス、丁卯ノ冬、大政復古ノ基業ヲ策シ、夙夜励精、献替規画、以テ今日ノ丕績ヲ賛成候段叡感不斜、仍賞其勲労位階ヲ進メ、禄千八百石下賜候事
○ 従四位藤原朝臣利通
叙従三位
右大臣従一位藤原朝臣実美宣
大弁従三位藤原朝臣俊政奉行
○ 従四位藤原朝臣利通
高千八百石
依勲労永世下賜候事
○ 広沢従四位真臣
積年心ヲ皇室ニ尽シ、竟ニ大政復古ノ朝ニ預参シ、日夜励精、献替規画、以テ今日ノ丕績ヲ賛ケ候段叡感不斜、仍賞其勲労、禄千八百石下賜候事
○ 従四位藤原朝臣真臣
高千八百石
依勲労永世下賜候事
○ 小松従四位清廉
積年心ヲ皇室ニ存ス、戊辰ノ春大政ニ預参シ、日夜励精、以テ中興ノ丕績ヲ賛ケ候段叡感不斜、仍賞其勲労、禄千石下賜候事
○ 従四位平朝臣清廉
高千石
依勲労永世下賜候事
○ 後藤従四位元燁
丁卯之歳、復古ノ基業ヲ助ケ、大政ニ参シ、日夜励精、以テ今日ノ丕績ヲ賛ケ候段叡感不斜、仍賞其勲労、禄千石下賜候事
○ 従四位藤原朝臣元燁
高千石
依勲労永世下賜候事
○ 岩下従四位方平
丁卯ノ歳、復古ノ基業ヲ助ケ、大政ニ参シ、日夜励精、以テ今日ノ丕績ヲ賛ケ候段叡感不斜、仍賞其勲労、禄千石下賜候事
○ 従四位藤原朝臣方平
高千石
依勲労永世下賜候事
○
各通 島従四位藤原義勇
北島従五位藤原秀朝
戊辰江城、新ニ定ルノ時ニ当テ、専ラ民政ヲ修メ、日夜鞅掌、奉職勉励候段叡感不浅、仍賞其勤労、禄百石下賜候事但シ終身
○
各通 土方従五位源久元
西尾従六位源為忠
同上民政ヲ市政ニ作ル
○ 西郷吉之助隆盛
大政復古ノ際ニ方リ、身ヲ以テ国ニ許シ、鞠躬尽力、以テ成効ヲ奏候段叡感不斜、仍賞其功労、正三位ニ被叙候事
○ 藤原隆盛
叙正三位
右大臣従一位藤原朝臣実美宣
大弁従三位藤原朝臣俊政奉行
○ 田宮如雲
大政復古ノ時ニ際シ、一藩ヲ助ケ、力ヲ皇室ニ尽シ候段叡感不浅、仍賞其功労、禄四百石下賜候事
○ 田宮如雲
高四百石
依功労永世下賜候事
○ 福岡従四位
前同文
高四百石
○ 中根雪江
前同文一藩ノ二字ヲ其藩ニ作ル
高四百石
○ 辻将曹
前同文
高四百石
○ 江藤新平
戊辰江城、新ニ定ルノ時ニ当テ、専ラ民政ヲ修メ、日夜鞅掌、奉職勉励候段叡感不浅、仍賞其勤労、禄百石下賜候事但シ終身
○ 新田三郎
戊辰江城、新ニ定ルノ時ニ当テ、民政ニ従ヒ職務勉励候段叡感被為在、仍為其賞、禄五十石下賜候事 但シ終身
○ 田中従五位不二麿
丁卯復古ノ際ニ当リ、時務鞅掌、力ヲ朝家ニ致候段叡感不浅、仍賞其功、目録之通下賜候事
目録金千両
○ 神山従四位君風
丁卯復古ノ時ニ際シ王事ニ勤労候段叡感被為在、仍為其賞、目録之通下賜候事
目録金五百両
附録
○ 林半七
昨年流賊追討之砌、南部表ヘ出張尽力之段、神妙ニ被思召候、依為慰労、目録之通下賜候事
目録金二百両
○廿七日〈乙未〉
【集議院行幸ノ事】
集議院行幸