鎮将府日誌 第四
慶応四年戊辰〈自八月九日 至同十二日〉
○八月九日御沙汰書
吉良源六郎
武田侍従
自今朝臣被召加、本禄如旧下賜候事
八月
鎮将府江、諸向ヨリ願伺届等差出候節者、以来本紙ニ写書相添、二通ツ、差出可申候事但写書之分ハ、半紙ニ相認可申事
八月
筑前藩 海軍人数
右飛隼丸ヘ乗組被仰付候事
前橋藩
其藩兵隊、佐貫出張之上ハ、阿部駿河守所持之武器類、佐倉藩ヨリ請取可申旨、被仰出候事
土浦藩 精兵三百人
当表ヘ出兵被仰付候条、急速出兵可然旨御沙汰候事
佐倉藩
佐貫表江出張之兵隊、御用有之候条、当表ヘ急速出勢可有之旨御沙汰候事
鷲尾侍従
白川口総督、依所労被免候事
正親町中将
奥羽追討白川口、為総督出張可有之事
笠間藩 精兵二百人
奥州磐城平ヘ神速出張可有之旨御沙汰候事
伊州藩届書二通
去月廿九日御軍令之通、浪江宿迄繰込、止宿致シ候様御沙汰ニ付、早速進軍仕候処、高瀬村之先ニテ、賊之残兵壱人召捕、致糺問候処、先刻迄爰許ニ六百人計屯集仕候、唯今浪江宿迄引取由ニ付、早速兵隊分配、進軍イタシ、浪江宿入口迄、段々押込候内、筑州兵隊出兵ニ付、倶々尽力、段々遂苦戦、入口三丁計先迄攻撃仕候得共、何分寡少之兵、且及黄昏、其上応援之兵参リ不申候故、不得止筑前藩江申談、高瀬村江放火致シ引取申候此段御届申上候以上
但同所戦争之節、死傷左之通
即死 阿川又五郎
同 長谷銅七
同 八畑浅吉
同 片岡俊助
同 奥山市松
深手 真野総太郎
深手 棚瀬季太郎
同 伊東彦太郎
同 真弓林兵衛
浅手 山本助蔵
同 杉浦清蔵
同 千葉市太郎
同 増田忠次郎
浅手 三輪庄兵衛
八月朔日
八月朔日朝七字ヨリ、長州藩同様山手進軍仕候様、御軍令ニ付、昨夜尚高瀬村手前ニ番兵差置候処、賊出没致シ候ニ付、終夜山上ヨリ放発罷在、朝来其侭用意仕進軍、浪江宿右之手江伺、長州勢同様攻撃進入、賊敗走散乱仕候、此段御届申上候以上
但於同処、分捕左之通
米二百五拾俵〈内白米百五十俵籾米百俵〉
八月三日 伊州藩
筑州藩届書
去月廿八日九ツ時頃、奥州富岡ヨリ、浜手間道新田原迄進軍之処、賊徒大砲打出シ、暫時戦争、賊徒敗走候ニ付、熊川村迄追討候処、賊徒暫踏止リ、且戦且走、遂ニ逃亡候処、時刻及黄昏候間、熊野町迄人数引揚申候、同廿九日平明、熊野町ヨリ山手間道進軍、野上村ニテ四ツ時頃ヨリ、半時余接戦、乍賊徒敗走仕候、同日野上村ニテ整列、直ニ新山駅江進軍、同駅ヨリ伊州ト合兵、九ツ半時頃ヨリ進発仕候、途中賊徒所々ニ屯集之処、追々悉ク散乱候ニ付、浪江迄相迫候処、賊徒盛返シ多人数繰出、頗烈戦ニ相成、味方小勢ニテ弾薬打切、且日モ西山ニ傾キ、始終無覚束候ニ付、新山駅迄応援申達候得共、及遅延、夜ニ入、甚苦戦仕、一ト先山手江引揚候処、漸援兵到着致シ候ニ付、又々発砲候処、賊徒引揚候ニ付、終夜同所ヘ番兵仕候、右三度之戦争ニ、討死、手負、左之通ニ御座候、且又賊徒数多打取候得共、何分調行届兼候段申越候、此段御届申上候以上
浅手 隊長 根木源五左衛門
討死 銃頭 秦伝
同 士官 上村伝
同 野口藤兵衛
同 銃隊 川庄音五郎
同 中村四郎太
同 荒木多守
同 的野太一郎
同 高原森之助
同 夫卒次平
同 夫卒磯平
深手 士官 立花市右衛門
同 山鹿吉郎兵衛
同 安藤新平
同 石黒安六郎
同 大久保左源太
同 広沢源兵衛
同 吉塚栄作
同 池田新兵衛
同 河原林貞次郎
同 宗壬四郎
同 銃隊 戸田仁三郎
同 銃隊 中村善次
同 大倉周之助
同 谷口友太郎
同 佐野新助
同 半田政太
同 木曽小太郎
同 士官湯浅六三郎 家来
浅手 銃頭 樋口忠五郎
浅手 士官 久佐八郎左衛門
同 藤村幸吉
同 栗生六兵衛
同 岩佐平之進
同 田尻千吉
同 竹中与右衛門
同 若松久之丞
同 銃隊 宮崎甚平
同 銃隊 藤村立三郎
同 伊藤左平
同 山路久兵衛
同 友納善兵衛
同 脇村司
同 根本源五左衛門家来 柳瀬大右衛門
同 士官松本彦之丞 家来
同 夫卒八右衛門
同 夫卒善十
右之通御座候以上
八月八日 筑州 矢野安太夫
彦根藩届書
当月廿四日、弊藩固場所釜子駅ヘ、賊襲来候様子ニ付、直様大隈川辺江出張、手配致シ候処、九ツ半時頃、賊兵四五百人押寄、右川向ヨリ頻リニ砲発、一旦ハ川中央迄進来候処、大小砲ヲ以テ逐退ケ、薄暮止戦仕候、其節味方手負、左之通御座候以上
三浦尽蔵隊 平塚市左衛門
青木十郎次隊 中川喜多郎
以上
七月廿一日 井伊掃部頭内 河手主水
土州藩届書
昨廿八日朝四字頃、弊藩持口湯本街道為巡邏出兵仕、一手ハ上羽太、虫笠辺ニテ、少及戦争、真名子村迄追撃、右村ニ放火仕、一手ハ鶴生、追原、折口、高助等之村々ヘ相進候処、賊徒逃去候迹ニテ、不及戦争、是亦同様放火仕候、畢竟右村々、爾来賊徒ノ宿営ニテ、持場口ヘ襲来ノ根拠ニ御座候間、不得止焼払申候、双方二字頃帰陣仕候、弊藩手負、討取、分捕等左之通御座候以上
手負 麻田藤太郎 討取二人
生捕二人但夫卒
目籠二舁
米俵八ツ
小銃五挺
大小刀三本
右之通御座候以上
七月廿九日 土州 板垣退助
薩州藩届書
去廿四日、長州、土州、大垣等之人数ト同ク弊藩諸隊モ棚倉ヘ繰出シ、廿六日三春表ヘ発向仕候処、三春重役共、遥ニ出迎、別紙之通歎願書差出候ニ付、城下迄入込候処、更ニ敵対候者一人モ無之、弥恭順無相違相見候折柄、翌廿七日、岩城平ヨリ被差廻候官軍来着ニ付、尚申談シ、追々奥地ヘ進撃之積御座候由、同藩出先之輩ヨリ申越候間、此段御届申上候以上
七月廿九日 薩州 相良治部
別紙
今般主人万之助、謝罪歎願書差上候ニ付、家来共役場ニ罷在候而者、奉対天朝、恐入奉存候ニ付、諸役場政事向、金穀等迄、総而奉差上、寺院在住、謹慎罷在候様仕度奉存候、右之段何分ニモ御執成被成下、宜敷御指揮奉願上候以上
七月 秋田万之助内 家老共
御沙汰書
万里小路左小弁
当分大総督府参謀兼勤被仰付候事
八月
同九日、徳川亀之助、始テ発府、駿河ヘ入国之事
○同十二日御布告
一、親王、大臣及三等官巳上、中仕切門外可為下馬下乗事
一、無役之公卿、諸候、大手橋外可為下馬下乗事
一、中大夫巳下、総而下馬札ニ而、可為下馬下乗事
一、三等官巳上及無役之公卿、諸候、可為玄関通行事
但無役者刀供侍ニ為持置、玄関詰江取次申入、溜所ニ相扣、猥ニ殿中徘徊不相成事
一、中大夫、下大夫、有位者脇玄関、無位者中之口可為通行事
但刀以下同断
一、四等官巳下、諸士之向、中之口可為通行事
但刀以下同断、尤諸役人者格別之事
一、召連候人数、大手橋内、坂下橋内、可為政体御定之通、此外兵隊召連候儀、不相成事
但供侍之者共、腰掛ニ猶予可有之、尤諸役附供廻リ、中之口門内、左右諸局ニ相扣可申事
一、家来之者共、主人江謁見致シ度節、中之口詰江取次可申入事
一、帯刀之外、大手門通行禁止之事
但主人召連候者、格別之事
右之通、今般御規則被仰出候条、此旨可相心得候様御沙汰候事
八月
薩州藩届書
三春表ヨリ、一里許モ有之糟沼ト云、二本松領賊兵屯集之由ニ付、廿七日夜二字頃ヨリ弊藩二百余人、土州兵ト共ニ致進撃、五六十人討取、本宮迄追討致シ、引揚ケ、同日ヨリ廿八日迄之間、長州、備前、彦根、黒羽、大垣、土州及弊藩人数等、阿武隈川押渡リテ本宮、小浜ノ両所ニ一泊シ、廿九日暁五字、双方ヨリ二本松ヘ押寄候処、城ヨリ十四五丁可有之場所ニ、賊兵砲台ヲ構ヘ、厳敷防戦候得共、官軍烈鋪攻掛リ、一時ニ打破リ、直様城ニ取掛候処、大手前ニテ少々砲戦候得共間モ無之賊徒逃去リ、城ニ火ヲ掛、福島、会津街道指而落行候ニ付、直様官軍不残城下ヘ繰入申候、此日打取百四五十人位、未慥ニ不相分候、弊藩戦死、手負、左之通ニ御座候間、此段御届申上候以上
戦死 山田十郎
戦死 尾上為八郎
同 日高郷左衛門
同 有川藤七郎
同 川上助十郎
同 井上真左衛門
同 満尾祐次郎
同 藤崎宗八郎
手負 貴島卯太郎
手負 山下喜之助
同 松崎杢左衛門
同 宮里仲庵
同 山口藤左衛門
同 藤崎真次郎
同 市来宗次郎
同 鎌田弥九郎
同 深見清次郎
同 吉武彦四郎
同 大迫清左衛門
同 西俣彦五郎
同 二木甚兵衛
同 榎本新助
同 本田仲之丞
同 松本助之丞
同 土工夫 市太郎
同 人足頭 磯吉
同 同 源蔵
同 人足 房右衛門
八月五日
薩州
相良治部
鳥津式部
彦根藩届書
七月廿六日払暁、弊藩先手分隊、田母神村出発、三春ヘ進軍仕候処、解城降伏相成候間、同夜先鋒館林、弊藩人数ニテ、城受取申候、其節残賊散乱致シ候中、別紙之通リ生捕、分取仕候趣、三春出先ヨリ申越候条、此段御届申上候以上
生捕一人〈但福島藩遠藤謹吾〉搦取人 久保田松之助
同一人〈但仙台藩佐々木賢之助〉同 田中外次郎
同四人〈但仙台藩 加藤九三郎 佐藤金太夫 芳賀宇佐次 佐藤左衛門〉
鉄砲四挺弾薬壱箱弾薬三包
八月六日 彦根 河手主水
黒羽藩届書
去ル廿四日朝第五字、釜子陣屋出発、兼而御軍議之通リ、棚倉表発向之各藩、同時ニ石川村ヘ着陣、翌廿五日、忍藩、弊藩、殿被仰付、同村ヲ発シ、蓬田村ヘ着陣、翌廿六日朝第二字同所発向、秋田万之助降伏ニ付、三軍三春城下ヘ乗入リ、同廿七日本宮駅打入ノ先鋒可致旨、御達ニ付、十一字同所進発、勿論斥候五人差出候処、大隈川手前ヨリ、川ヲ隔打合候趣、注進ニ付、直ニ同所ヘ人数手配仕候、然処、土州藩従間道川際迄進候処、弊藩モ共々相進、及戦争候得共、右川渡兼候間、弊藩小隊長渡福之進、益子四郎、両人川相淤ギ、船ヲ奪取リ、忽人数打渡、本宮駅乗取リ、賊兵二百人程、一里或ハ半里程、逃去、土州藩一同追討仕候、其節討取別紙ニ申上候、同廿八日朝第七字、二本松、忍藩、弊藩番兵所ヘ、賊兵多人数襲来リ、直ニ追退候処、郡山街道館林藩持口、頻ニ苦戦之由報知ニ付、高橋亘理隊半隊、為援兵差出シ、暫時戦争仕候、其内賊勢敗走ニ付、半里程追討之上、凱陣仕候、同廿九日二本松ヘ進軍ニ付殿被仰付候得共、為大斥候五字頃一小隊差出、斥候及戦争、別紙之通討取、分捕、且戦死之者御座候、余ハ為殿、彦根藩、忍藩、大垣藩、館林藩一同落城後着陣仕候、此段御届申上候以上
賊兵打取 拾一人〈但本宮駅 戦争之節〉
賊兵打取 六人〈但二本松 戦争之節〉
戦死 二番隊平士 佐藤兼治
八月朔日 大関泰次郎家来出兵 隊長 五月女三左衛門
彦根藩届書
去ル廿七日、弊藩先手分隊、三春陣払、各藩同様二本松江進軍仕候処、本宮口入口阿武隈川渡船、賊徒共悉引揚候ニ付、筏組立、同夜九ツ時頃一同打渡、翌廿八日未明、須賀川会津口等諸路ヨリ賊徒襲来候ニ付、弊藩人数、会津口両路ヨリ進撃、追却仕候処、後面須賀川口苦戦之趣ニ付、急速反援、半里計尾撃、終ニ未ノ半刻止戦仕候、其節打取、分捕、并ニ弊藩死傷、別紙ノ通ニ御座候趣、本宮出先ヨリ申越候条、此段御届申上候以上
首八級但仙台藩
生捕五人同
討死 貫名徳次郎隊 本田余喜一郎
手負 軍事局付 田中外次郎
手負 同 中川織之進
同 貫名徳次郎隊 磯島新七
同 平山信太郎
同 大塚路之助
同 常盤平造
同 堀部弥次郎隊 寺田権三郎
右之通ニ御座候以上
八月六日 井伊掃部頭内 河手主水
館林藩届書
去月廿八日、於奥州安積郡本宮宿、朝六ツ半時頃斥候差出候処、賊徒郡山口并ニ山手ヨリ襲来ノ趣、申帰リ候ニ付、不取敢大砲壱門、人数一小隊繰出シ、及防戦候処、賊徒先達而地利ニ拠リ、殊ニ多勢烈敷致発砲候ニ付、速ニ打破、兼而微勢之兵隊、殆及苦戦候処、土佐藩、彦根藩ヨリ応援有之、合併進撃之上、賊徒打散、一里余致進撃候、此段御届申上候
討死 村山直衛隊 柴田蔵次郎
手負 山口六三郎
手負 岡村多膳隊 橋本守衛
同 下田半太夫
同 高橋徳八隊 吉田安太郎
同 大砲方 平野右輔
同 渡辺三郎右衛門
同 井田元吉
戦死 大砲方力士 政吉
同 同 道蔵
同 軍監萩谷又兵衛従士 惣助
手負 夫卒 善吉
右本宮駅ニテ戦争之節、戦死、手負ニ御座候
八月二日 館林藩 高山甚五兵衛