太政官日誌・明治2年51号

太政官日誌 明治二年 第五十一号
明治己巳 自五月十六日 至十九日
東京城第十四
○十六日〈丁亥〉
【兵隊調練天覧ノ事】
御達書写
軍務官
来十八日、四大隊調練天覧可被遊旨、被仰出候事
但、雨天之節ハ、御順延之事
○ 諸侯
来十八日、於本丸跡、兵隊調練天覧被為在候ニ付、拝見被仰付候事
衣体ハ直垂着用之事
但、雨天之節ハ、御順延之事
○ 六官諸官員
右同文直垂着用ノ条ナシ

次序
七字、号砲二発
此時直ニ本丸ヘ可相詰事
八字、号砲三発
出御
十一字、畢
【日誌司、通商司管轄替ノ事】
〇日誌司
是迄議定官管轄之処、向後行政官管轄ニ被仰付候事
○ 会計官
通商司、其官附属被仰付候事
○ 外国官
通商司、其官附属ニ候処、今度会計官附属被仰付候事
○ 通商司
是迄外国官附属之処、向後会計官附属被仰付候間、為心得相達候事
【留守長官、内廷職知事等任免ノ事】
御沙汰書写
鷹司前右大臣
是迄之職務被免、留守長官被仰付候事
○ 中御門大納言
是迄之職務被免、内廷職知事被仰付候事
○ 同人ヘ
東下被仰付候事
○ 岩下左二
是迄之職務被免、留守次官被仰付候事
○ 烏丸宰相
是迄之職務被免、留守次官被仰付候事
○ 毛利少将
議定心得ヲ以テ出仕被仰付置候処、被免候事
○ 細川侍従
所労全快次第、東下可致旨被仰出候事
【福羽、佐々木陞叙ノ事】
宣下状写
福羽五位
佐々木五位
叙従四位下
右宣下候事
○十七日〈戊子〉
【郭内外武士地ノ事】
御布告書写
一、御布告之通、万石以下屋敷、可為一ケ所事
但、下屋敷上地致シ候而差支、尚又拝借願済ニ相成候モノハ、地税可差出事
但、町屋敷受領之モノハ、武士地ヘ引替相願可申、尢引替候而ハ難渋之向ハ、其侭被下候積ニ付、其頭支配ニテ、取調可申立、何モ地税之儀ハ、追而可相達事
一、内神田、浜町、築地辺、郭内ニ準シ候旨去辰九月中、相触置候処、此度神田橋門通ヨリ、昌平橋通ヲ境トイタシ、東之方神田浜町、築地辺以後、郭外ト可相心得事
一、郭外ニテ、町地ニ可相成武士地者屋敷改ニテ、取調可申立事
但、町地ニ相成候上ハ、都而町並之通、尢武士地ヘ住居可相済身分之者モ、住居相免シ、地税町入用トモ、為差出可申事
一、拝領町屋敷所持之者ハ、地税可差出事
一、宮堂上家来諸藩士等、文武師範致シ候歟又ハ無拠筋ニテ、其主家邸内ニ罷在候テハ差支候分ハ、武士地拝借聞済、地税為差出可申事
但、身分之義ハ、主人又ハ其頭支配ヨリ屋敷改役所ヘ添簡ヲ以、申立候ハヽ、糾之上地所貸渡シ可申事
一、是迄武士地ヘ住居致シ居候町人別之者、又ハ町医師、御用達町人、角力、検校、勾当等者、総而住来町人別之部ニ入、其所年寄共、右地所拝借証文ヘ加印致シ、差出候ハヽ、当分差置、地税為差出可申事
右之通ニ有之候間、相心得可申事
【徳川大納言議定官被免ノ事】
御沙汰書写
徳川大納言
昨年来、国家多事之折柄、一際励精、深ク御満足被思召候、今般議政官被廃、議定定員被仰出候ニ付、一先職務被免候事
【麝香ノ間祗候ノ事】
〇各通 蜂須賀中納言
池田中納言
鍋島少将
毛利少将
亀井中将
池田少将
国事御諮詢被為在候間、隔日出仕可有之候事
但、麝香之間祗候可有之事
〇各通 徳川大納言
浅野中納言
細川侍従
出仕之節、麝香之間祗候可致事
○十八日〈己丑〉
【四条侍従岩代巡察使仰付ラル】
御沙汰書写
四条侍従
民部官副知事之心得ヲ以テ、岩代国巡察使被仰付候事
【会計官判事開港場ヘ出張ノ事】
輔相ヨリ開港場出張会計官判事ヘ達書
今般通商司、会計官所属トシテ、判事開港場ヘ出張、被仰付候、元来会計之儀ハ、国家治乱ニ関係シ、不容易事務ニ付、当職大任不待言候、今度御決議之上、会計前途之目的、相立候迄之間、惣而御委任被仰付候間、一意奉職勉励可致事
五月
輔相
【制度寮廃止ノ事】
御布告書写
自今制度寮被廃候
○十九日〈庚寅〉
【静寛院宮京都御住居仰出サル】
御沙汰書写
徳川新三位中将
静寛院宮、来春迄、滞京被仰出候処、思召ヲ以、今般改テ京都住居被仰出候事
但、家茂年回之節ハ、東下可有之事
五月
【版籍奉還上表ニ付御沙汰】
〇各通 榊原式部大輔
伊達遠江守
溝口伯耆守
加藤遠江守
伊達若狭守
鳥居丹波守
土方大和守
戸田長門守
前田丹後守
加藤出雲守
有馬兵庫頭
高木主水正
今度土地人民版籍奉還可致之旨、及建言候条云々〈第十号、池田中将御沙汰書同文〉
○ 井伊右京亮
今度土地人民版籍奉還可致之旨、及建言候条全忠誠之志、深叡感被思食候、尚会議ヲ経、公論ヲ被為竭、何分之御沙汰可被為在旨、被仰付候事
【内宮、外宮御垣木造始御神事ノ事】
御達書写
来ル廿六日、就内宮御垣木造始、従廿五日晩至廿六日午刻、同廿八日、就外宮同断、従廿七日晩、至廿八日午刻御神事候間、重軽服者、僧尼等、参内可憚候事
但、政府出仕之輩ハ不及憚事
校正
第四十四号、一葉前面ノ、厳重御沙汰候事ト、アルハ厳重御沙汰可有之候事ノ誤リ
同、十一葉前面ノ、為窺天機十名宛トアルハ、二十名ノ誤リ
第四十五号、三葉後面ノ、山科宮トアルハ、山階宮ノ誤リ也