太政官日誌・明治2年92号

太政官日誌 明治二年 第九十二号
明治己巳 自八月廿二日 至二十五日
東京城第五十五
○八月廿二日〈辛酉〉
【招魂社祭資ノ事】
御沙汰書写
招魂社
高一万石
為祭資、永世被宛行候事
【板倉伊賀家来取締ニ付岡山藩ヘ御沙汰】
〇岡山藩
板倉伊賀家来幷城地取締被仰付置候処、今般御処置相済候ニ付、被免候事
○二十三日〈壬戍〉
【仙台藩北海道開拓ノ事】
御沙汰書写
伊達建千代麿
北海道開拓之儀ハ、方今之急務、追々御処置モ有之候処、於其藩ハ、彼地之風土熟知之者モ不少趣、相聞候ニ付、士族ヲ始メ、農工商ニ至ル迄、開拓志願之者相募リ、自費ヲ以テ漸次移住為致候様、精々尽力可致旨御沙汰候事
但、移住人員幷開拓之目的相立、申出候ハハ、地所割渡可申事
○ 伊達藤五郎
北海道開拓之儀ハ、方今之急務ニ付、追々御処分モ有之候得共、重大之事柄、全地一時ニ御手ヲ可被為着、目的モ難相立折柄、其方儀不憚艱難、自分彼地ヲ跋渉シ、開拓致度志願之趣、神妙之至ニ被思食、北海道開拓御用被仰付候条、家来其外有志之徒相募リ、自費ヲ以漸次移住、屹度実効相立候様、尽力可致旨御沙汰候事
但、地所之儀ハ、追而御沙汰可有之事
○ 開拓使
仙台藩伊達藤五郎儀、家来引連、北海道転住自費ヲ以テ開拓致度志願之趣、達上聞、御用被仰付候間、土地割渡可致事
但、本藩減禄之末、無拠自費ヲ以テ転住、其情実可憐事ニ付、相応之地所可相渡、且詮議之上可申出事
○二十四日〈癸亥〉
【皇后東京ヘ行啓ノ事】
御布告書写
来ル九月中皇后東京ヘ行啓被仰出候事
【諸官員東京移住差許ノ事】

二官六省、其外諸官員、東京ヘ家族引寄候儀可為勝手事
但、御定之御手当被下候事
【按察使諸官員等級ノ事】

按察使諸官員等級之儀、開拓使同様被仰付候事
【中宮御迎ノ事】
御沙汰書写
大原正四位
九月中宮東京ヘ行啓ニ付、為御迎、急速上京被仰付候事
○二十五日〈甲子〉
【諸道不作ニ付節倹救恤ノ詔書】
詔書写
朕登祚以降、海内多難、億兆未タ綏寧セス、加之今歳淫雨農ヲ害シ、民将ニ生ヲ遂ル所ナカラントス、朕深怵惕ス、依而躬ラ節倹スル所有テ、以テ救恤ニ充ントス、主者施行セヨ
御布告書写
詔書被仰出候通、兵馬之後、庶民未タ安堵ニ至ラサル折柄、当年諸道不作、物価日増ニ謄貴、無告之窮民ハ勿論、一同之難渋差迫リ殊更東京ハ近来衰微之砌、人口ハ従前之通莫大ニテ、遊民最多ク、漸次産業ニ基クヘキ、御施法モ未タ行届カセラレサル中、今日ノ姿ニ相成、且又京都ニ於テハ、即今御留守ト相成、自然職業ヲ失ヒ、困窮ニ立至リ候者モ不少、全ク時勢之変遷、無拠次第トハ申ナカラ必至難渋、彼是以テ深被為悩宸襟、格別之御節倹被遊、既ニ餔饌供給ヲモ御減少被為在、窮民御扶助被遊候、就而ハ於諸官モ、官禄之内ヲ以テ、救恤ニ被充候様願出候段、神妙之儀ニ被聞食候、右ハ御不本意ニ被為在候得共、願之趣、至誠貫通セサルモ御残念ニ被思食、当年之所、夫々減少、返上之儀御許容相成、両京救荒ニ可宛行旨御沙汰候事
但、救荒ハ一時之変ニ処スル事ニテ、総而遊手徒食之者無之様仕法立、最可為急務事
【親王家並社寺菊御紋ノ事】

親王家ニテ、菊御紋用来候処、向後十六葉之分ハ不相成、十四五以下、或ハ表菊等品ヲ替ヘ、御紋ニ不紛様可致旨、被仰出候事

社寺ニテ、是迄菊御紋用ヒ来ル者不少候処、今般御改正相成、社ハ伊勢、八幡、上下加茂等、寺ハ泉湧寺、般舟院等之外ハ、一切被差止候旨、被仰出候事
但、格別由緒有之社寺ハ、由緒書ヲ以テ可伺出候事
【諸寺院下馬下乗札取払ノ事】
従前諸寺院ニ掲来有之候下馬下乗等之札、向後取払候様、被仰出候事
但、格別由緒有之寺院ハ、其所々之都府藩県ニテ取調、可伺出候事
【非役華族等東京移住差許ノ事】
非役華族幷諸官人口向取次以下、総テ東京ヘ家族引寄セ候儀、可為勝手事
但、相当之御手当被下候事
【柏崎県取建ノ事】

越後国柏崎県被取建候事
【内宮外宮正遷宮ノ事】

来月四日戍刻内宮正遷宮、同七日同刻外宮正遷宮
右両夜東庭代下御被為遊御拝候事
【伊勢例幣ニ付御潔斎ノ事】

就伊勢例幣、従来八月廿九日晩、到来月十二日朝御神事、従九日晩御潔斎被為遊候、重軽服者僧尼参朝可憚事
但、御潔斎迄ハ、政府出仕之輩、服者不憚候事
【北海道開拓長官ヘ御沙汰】
御沙汰書写
東久世開拓長官
北海道開拓ハ皇威隆替之所係、方今至重之急務ニ候、今般彼地ヘ出張、数百里外殊方之寒彊ニ、其事務ヲ管督候事、不容易艱難、一入苦労ニ被思食候、就テハ向後土地墾闢、人民蕃殖、北門之鎖鑰、厳ニ樹立シ皇威御更張之基ト可相成様、勉励尽力可有之旨御沙汰候事
【伊達藤五郎北海道支配地ノ事】

伊達藤五郎
胆振国之内、有珠郡
右一郡、其方支配ニ被仰付候事
○ 開拓使
胆振国之内、有珠郡
右一郡、伊達藤五郎ヘ支配被仰付候間、引渡可申事
【救荒ニ付島津、毛利賞秩半高返納ノ事】

鹿児島藩知事 島津忠義
山口藩知事 毛利広封
賞典ハ深重之叡旨ヲ以被仰出候事ニ付、願之趣不被及御沙汰段、先達而御達相成候処、猶又再三懇願之旨趣、全至誠之所致、神妙之至被思食候、就而ハ即今諸道不登庶民凍餒之勢ニテ、救荒目下之御急務ニ候処、御用途必至御差迫之折柄、旁以乍御不本意、当年限リ賞秩半高返納被聞食、救荒ニ可被為充行旨被仰出候事
但、叙位返上ハ不被及御沙汰候事
【柏崎県支配地ノ事】
〇柏原県
其県被取建、支配地之儀ハ、水原県之内半方割渡候様、被仰付候間、同県ヨリ受取可申事
○ 水原県
今般柏崎県被取建、其県支配地之内、半方引渡候様、被仰付候事
【岩代国巡察使廃止ノ事】

岩代国巡察使
右被廃候事