太政官日誌 明治二年 第六十七号
明治己巳 自六月二十日 至二十五日
東京城第三十
○六月二十日〈庚申〉
【長崎府、県ト改称ノ事】
御沙汰書写
長崎府
其府自今長崎県ト被改候事
○二十一日〈辛酉〉
【通商司設置ノ事】
御沙汰書写
大阪府
今般通商司被設、山口五位、井上聞多等当官ヲ以テ、其府出張被仰付候ニ付、判事同様取扱可致事
○ 東京府
今般通商司被設、伊藤俊介当官ヲ以テ其府在勤被仰付〈以下同文〉
○ 神奈川県
今般通商司被設、五代才助当官ヲ以テ其県出張被仰付〈以下同文、但判事ヲ知事ニ作ル〉
○二十二日〈壬戍〉
【西郷、山県ノ留学ニ中村宗見通弁官トシテ同行ノ事】
御沙汰書写
中村宗見
西郷真吾、山県狂介、英国竜動府ヘ留学被仰付候間、通弁官トシテ同行被仰付候事
【維新御告祭ノ事】
御達書写
今般国是大基礎御確定、追々御施行被為在候ニ付、祭政維一之思食ヲ以テ、群臣ヲ被為率、来二十八日辰刻、神祇官ヘ行幸天神地祇及列祖之神霊ニ御告祭、被為遊候旨被仰出候事
【商会所廃絶ノ事】
〇
三都府諸開港場其他処々ヘ、府藩県ヨリ産物売捌ト唱ヘ、商会所取立、役人出張、米穀其外買シメ致シ、諸品追々不融通ニ相成、商民一般之難渋不少候、是迄一定之商律不相立候ヨリ、威権ヲ以テ、銘々勝手之商業取開、甚以不都合之事ニ付、此度会計官通商司ヲ被建追々商律御取設相成候間、右様之儀一切廃絶被仰付候、此旨相達候事
○二十三日〈癸亥〉
【職制改革ニ付御下問ノ事】
御下問書写
大宝以降、官名沿襲ノ久キ、有名無実ノモノ不少、昨春更始ノ際、専ラ実用ニ被為基、職制ヲ被為設候得共、未タ其名ヲ被正候ニ暇無之、依テ今般旧官ノ名ニ拠テ、更始ノ実ヲ取リ、斟酌潤飾、別紙之通被相定、更ニ衆議ヲモ被聞食、職制一定、名実相適候様被為遊度思食ニ付、銘々熟考、意見無忌憚可申出事〈別紙官位相当表職員令略之〉
【招魂祭ヘ勅使御差遣並参拝ノ事】
御沙汰書写
五辻弾正大弼
来二十九日招魂祭ニ付勅使トシテ参向被仰付候事
御達書写
来二十九日八字、於招魂場、祭奠被仰付候ニ付、議参始メ六官諸官員、参詣可為勝手候事但、諸人参拝被差許候事
【御告祭参拝ノ事】
来二十八日辰刻、神祇官ヘ行幸御神祭被為在候ニ付、三等官以上幷知藩事卯刻参拝、四等、五等官、午刻参拝可有之候事
但、有位ハ衣冠、無位幷用意無之輩ハ狩衣幷直垂着用可致候、供連之儀、別紙図面朱引内、帯刀一人、小者一人ニ限リ候事、尤重軽服者可憚候事〈別紙図面略之〉
【越後囲米積出禁止ノ事】
越後国所領有之面々、囲米廻漕之為メ、外国船相雇ヒ、新潟入港致候処、追々農商之米穀買込輸出致シ候輩有之、甚以下方之難儀ヲ醸候趣、右国中ハ昨夏大ニ水害ヲ蒙リ、当秋迄ノ民食取続無覚束ニ付、国中限リ売買可致旨兼テ布告モ有之通、旁以向後囲米ニテモ、外国船ヲ以テ廻漕致シ候節ハ、同府ヘ届出免許之上可取扱、総而私ニ積出之儀、堅ク被差止候事
【真田信濃守版籍奉還上表ノ事】
真田信濃守上表写
臣幸民誠恐誠惶、謹而奉申上候、嚮者列藩版籍返上之建言仕候処、臣愚加ルニ若年未熟罷在、先祖以来拝領之封土ヲ辱シ、藩屏之任モ未タ尽シ兼候程ノ身分ニテ、前途見据モ無御座、返上奉願候而ハ、却而奉恐入候儀ト奉存謹而差扣罷在候処、即今列藩版籍返上之儀、被為聞食、改而知藩事被仰付、御政令帰一之御趣意奉拝承候、就而ハ臣等ニ於テモ必何分之御処置、可被成下御儀ト奉存候得共斯御改制之日ニ当リ、独晏然奉待御沙汰罷在候而ハ、更ニ奉恐入候儀ニ付、謹而版籍返上仕度奉願候、此段宜御執奏可被下候、臣幸民誠恐誠惶、頓首謹言
六月
真田信濃守 幸民花押
弁事御中
○二十四日〈甲子〉
【正親町三条卿上京被免ノ事】
御沙汰書写
正親町三条前大納言
依所労願上京被免候事
【徳川新三位領知村替ノ事】
〇徳川新三位中将
其方管轄地三河遠江国之内、高一万九千石余村替被仰付、為代地別紙目録之通相渡候間上地三河国之方者伊那県幷板倉教之助ヘ引渡代地之儀ハ三河県幷大河内刑部大輔ヨリ請取可申事〈別紙略之〉
○伊那県
徳川新三位中将ヨリ上地、別紙高帳之通、其県可為管轄旨被仰付候事
○ 板倉教之助
岩代国大沼郡高一万七千石余、上地被仰付為代地、別紙郷村高帳之通引渡候事〈別紙略之〉
○三河県
其県管轄地、別紙目録之通、徳川新三位中将板倉教之助ヘ引渡可申事〈別紙略之〉
○大河内刑部大輔
徳川新三位中将管轄之内、村替被仰付候代地之内、別紙目録写之通相渡候間、地所引渡可申事〈別紙略之〉
【三河県廃止ノ事】
〇三河県
其県被廃、御料自今伊那県可為管轄旨、被仰付候事
○ 伊那県
三河県被廃候ニ付、御料自今其県可為管轄旨被仰付候事
【通商司御委任ノ件々】
〇通商司
今般会計官中、通商司ヲ置キ、追々商律ヲ可被為立タメ、左之条件御委任候事
一、物価平均流通ヲ計ルノ権
一、両替屋ヲ建ルノ権
一、金銀貨幣ノ流通ヲ計リ、相場ヲ制スルノ権
一、開港地貿易輸出入ヲ計リ、諸物品売買ヲ指揮スルノ権
一、廻漕ヲ司ルノ権
一、諸商職株ヲ進退改正スルノ権
一、諸商社ヲ建ルノ権
一、商税ヲ監督スルノ権
一、諸請負ノ法ヲ建ルノ権
右之件々御委任候間、三都府始メ諸開港場ヘ出張、地方官ヘ談合之上、施行可致事
○二十五日〈乙丑〉
【上杉式部ノ上地御振替ノ事】
御沙汰書写
上杉式部
先般削地被仰付候羽前国置賜郡、高四万石之地所、御詮議之次第有之、更ニ上地御振替被仰出、高帳写之通、改而上地被仰付候間、佐竹右京大夫、溝口伯耆守、酒田民政局出張之者等ヘ申談、地所引渡可申事
○佐竹宰相
先般削地被仰付候上杉式部旧領羽前国置賜郡、高四万石之地、今般御振替被仰出、高帳之通、改而上地被仰付候間、溝口伯耆守酒田民政局出張之者申談、地所受取可申事
○溝口伯耆守
右同文〈溝口伯耆守ヲ、佐竹右京大夫ニ作ル〉
○酒田民政局
右同文〈酒田民政局ヲ、佐竹右京大夫、溝口伯耆守ニ作ル〉
【英国王子渡来ノ事】
御達書写
近日英国王子渡来ニ付、御交際上之条理ヲ以御取扱相成候間、右御趣意相弁ヘ、下々ニ至迄心得違無之様可致候事
【減禄諸藩ト租税ノ事】
大夫士其外減禄或ハ方向未定等ニテ、領地引渡半途之分、管轄之府県ニ於テ、租税取約メ御収納同様取計可申事
但、追而安堵被仰付候分ハ、其度々可相達候条、収納現米金ヲ以テ相渡可申事