太政官日誌・明治2年16号

太政官日誌 明治二年 第十六号
明治己巳 自二月十日 至十二日
○二月十日〈壬子〉
【御沙汰書写】
○九門内警備ノ事
各通 毛利宰相中将
島津少将
山内少将
九門内警衛願之趣、神妙之事ニ候、然処、即今海内漸平定、諸道関門ヲモ廃止被仰出候折柄、却テ人心疑懼ヲ抱候儀モ可有之候ニ付、平日出張巡邏等ニ不及候得共、不遠御出輦ニ相成、御留守別而至重之事ニ候エハ、兼テ人数備置、非常之節ハ早々繰出、厳重御警衛可致旨御沙汰候事
○徴兵帰休ノ事
軍務官
先般徴兵御取立相成候処、即今東北平定ニ付更ニ兵制御詮議振モ被為在候間、一先帰休候様、被仰付候事
但、引取方之儀ハ、其官ニテ可相達事
○大久保岩丸旧屋敷返還ノ事
大坂府
其地ニ有之候大久保岩丸旧屋敷、今般被返下候間、同人家来ヘ引渡候様御沙汰候事
○大宮御所御警衛ノ事
各通 毛利宰相中将
島津少将
山内少将
願之趣モ有之、御東幸御留守中兼而人数備置非常之節、厳重御警衛可致旨、御沙汰之処、今般大宮御所御警衛、更ニ被仰付候事
但シ、島津少将ヘハ中宮御所、山内少将ヘハ桂御所
【加藤能登守版籍返還上表ノ事】
加藤能登守上表写
臣明実従曩祖以来、奕世無窮ノ天恩ニ浴シ涓滴之報効モ不奏、累年ノ風習ニ馴染シ、封土私有罷在候処、今也王政御一新、万機御親裁ノ秋ニ膺リ、長薩肥土ヲ始、各藩土地人民版籍奉還ノ上表、実以公明至当之儀ト奉存候、因茲区々小藩ニ候エ共、於臣明実モ同様奉返之度、鄙衷宜御執奏之程、奉懇願候、誠恐誠惶、頓首謹言
二月
加藤能登守 明実花押
弁事御中
御沙汰書写
加藤能登守
今度土地人民版籍奉還可致之旨、及建言候条全忠誠之志深云々〈第十号、池田中将ヘ御沙汰書同文〉
【出征諸隊ヘ御沙汰ノ事】
毛利宰相中将兵隊
国司詠蔵
河野弥次郎
長猪三郎
吉田豊槌
小沢七之助
三浦久熊
馬屋原三吉
中村貫一郎
西島新兵衛
城軍司
中川源太郎
森友孫一郎
藤井芳熊
石川栄吉
太田謙吉
山本仙之助
高島幹蔵
松本寛治
小者二人
征討出張、遠路跋渉、遂被創傷云々
第五号、同藩ヘ御沙汰書同文

毛利左京亮兵隊
白井友次郎
吉富治郎
杉村良平
西川勇次郎
豊島義之助
右同文
○十二日〈癸丑〉
【金札紙並奉書紙御用ノ事】
御沙汰書写
松平越前守
其方領内、越前国大滝、岩本、新在家、不老定友五箇村ヘ、金札紙御用被仰付置候取締三田村筑前始以下之者共、兼而従其方申付置候通、他村他国ヘ移住等之儀、決而不相成候且又旧来調達致居候藩々ヨリ、札紙注文等有之候者、其由会計官ヘ伺出、差図ヲ可受候、猶又今般右村々之者共ヘ、奉書紙御用調進被仰付候間、厚相心得、御用相勤可申旨相達候様御沙汰候事
【軍功賞典取調御用ノ事】
河田五位
軍功賞典取調御用掛、被仰付候事
【石川家ヘ上京ノ御沙汰】
石川日向守
石川丹成斎
御用之儀有之候間、重臣両人召連、至急上京可致旨御沙汰候事
【有馬中将副知事仰付ラル】
有馬中将
軍務官副知事心得、被仰付置候処、今般副知事更ニ被仰付候事
【坂田潔越後府権判事仰付ラル】
坂田潔
軍監被免、徴士越後府権判事、被仰付候事
【久世家一万石減知ノ事】
久世順吉
去子年、従旧幕府、其方領地之内一万石減知申付、和泉国ニ於テ四千石上地之筈之処、彼是自由申立、是迄不差出趣、如何之心得ニ候哉、右之地所早々、堺県ヘ引渡、且子年以来之収納米、一同上納可致旨御沙汰候事
○ 堺県
久世順吉領地之内、和泉国ニ於テ四千石、去ル子年、従旧幕府減知申付置候処、彼是申立是迄差出不申趣、以之外之事ニ候、右地所早々、其県ヘ引渡、且子年以来之収納米、一同上納可致旨、御達相成候ニ付、此旨相心得受取可申様御沙汰候事
【寺島外十士東京ヘ召集ノ事】
毛利宰相中将
其方家来、寺島秀之助、高橋熊太郎、前山精一郎、山県狂輔、木梨精一郎儀、御用有之、至急東京ヘ可罷出様、被仰付候間、此旨可相達候事
○ 島津少将
其方家来、大山格之助、村田勇右衛門、黒田了介儀、御用有之〈以下前文ニ同シ〉
○ 山内少将
其方家来、板垣退助、深尾三九郎儀、御用有之〈以下前文ニ同シ〉
○ 大村丹後守
其方家来、渡辺清左衛門儀、御用有之〈以下前文ニ同シ〉
各通 寺島秀之助
高橋熊太郎
村田勇右衛門
前山精一郎
山県狂輔
木梨精一郎
大山格之助
黒田了介
板垣退助
深尾三九郎
渡辺清左衛門
御用有之ニ付、至急東京ヘ可罷出旨御沙汰候事
【東京金銀座廃止ノ事】
御布告書写
今般新貨幣鋳造、被仰出候ニ付、太政官中新ニ造幣局御取建ニ相成候、依之是迄之貨幣司御廃止被仰出候ニ付、於東京モ金銀座被廃止候旨、被仰出候事
一、新金御決議ニ付而ハ、以来朝廷ヨリ正金御遣シ出シ無之候間、於東京モ、可為同様被仰出候事
金札相場被仰出候上ハ、月給其外御払物総テ一ケ月中、十日平均之相場ヲ以、御渡方有之候、右ニ付租税上納之儀ハ、過不及無之様、時々評議之上可取扱旨、被仰出候事