太政官日誌 明治二年 第百十二号
明治己巳 自十二月十五日 至廿日
東京城第七十五
○十二月十五日〈壬子〉
【賞賜ノ事】
御沙汰書写
山口藩 奥平謙輔
勝間田百太郎
福井藩 市村勘右衛門
村田巳三郎
岡部造酒之介
高鍋藩 阪田潔
右金三百両宛
山口藩 井上小太郎
鹿児島藩 新納四郎右衛門
右金二百五十両宛
山口藩 白尾行八郎
長田次郎右衛門
鹿児島藩 䒾田耕之丞
吉田清蔵
市束太郎左衛門
前田伊右衛門
与板藩 飯塚貢
山口藩 瀬原泰蔵
厚東次郎介
吉本藤太
右金百五十両宛
戊辰之年、賊徒掃攘之砌、軍事勉励之段、神妙之至被思食、仍為其慰労、目録之通下賜候事
○
山口藩 岡半三郎
鹿児島藩 田尾善左衛門
吉原彦左衛門
松井十郎
右金百両宛
同上〈神妙之至被思食ノ七字、奇特之至候ニ作ル〉
○
犬山藩 松田将造
戊辰之年賊徒掃攘之砌、軍務勉励之段神妙之至被思食、仍為其賞終身五人扶持下賜候事
○
白川県支配所 磐城国白川郡白坂駅 太平八郎
其身一代、苗字帯刀差免、五人扶持被下候事
同県支配所 同国同郡白川駅 芳賀源左衛門
其身一代、苗字帯刀差免、四人扶持被下候事
福島県支配所 伊達郡石莚村 次郎七
其身一代、四人扶持被下、諸役免除申付、最寄県支配所ヘ移住勝手之事
同所 久之助
死去ニ付、妻子ヘ一代三人扶持被下、諸役免除申付、最寄県支配所ヘ移住勝手之事
水原県支配所 越後国蒲原郡葛塚村 遠藤七郎
其身一代、苗字帯刀差免、五人扶持被下候事
新発田支配所 越後国蒲原郡安田 松田秀次郎
其身一代、苗字帯刀差免、五人扶持被下候事
柏崎県支配所 越後国魚沼郡柏崎 星野藤兵衛
其身一代、三人扶持被下候事
水原県支配所元下大夫溝口某知行所 越後国蒲原郡大野村 小林政司
其身一代、苗字帯刀差免、三人扶持被下候事
新発田藩支配所 越後国俵柳村 小林六兵衛
其身一代、苗字帯刀差免、三人扶持被下候事
白河県支配所 磐城国白川郡白川 佐太郎
金百両被下候事
同県支配所同 甚八郎
金八拾両被下候事
同県支配所 同国同郡白坂駅 順之助
金四拾両被下候事
同県支配所同 新左衛門
金五拾両被下候事
同県支配所 同国同郡白川駅 多三郎
金三拾両被下候事
福島県支配所 伊達郡石莚村 平十郎
金五拾両被下候事
○ 民部省
別紙名前之者共、昨戊辰之年、賊徒掃攘之砌尽力不少段相聞、奇特之至ニ付、表目之通御賞賜被下候間、於其省取計可致候事
○
第一大隊 撒兵隊
金千両
同三番中隊 左小隊
己巳之年、流賊追討之命ヲ奉シ、蝦地ニ渉リ各所戍衛精勤之段、神妙被思食、仍為其慰労、目録之通下賜候事
○ 兵部省
別紙之通被仰出候条、夫々可分与事
○十七日〈甲寅〉
【大学、南校、東校ノ事】
御沙汰書写
大学校
自今大学校ヲ大学ト改称、開成所ヲ大学南校医学校ヲ大学東校ト可称事
【兵卒罪状取裁ノ事】
兵部省
刑律御改正ニ付、当分之処、兵卒罪状之儀ハ於其省取計可申事
但、余人ニ連累等有之節ハ、其次第ニヨリ於刑部省取計候事
○十八日〈乙卯〉
【各国公使応接立合ノ事】
御沙汰書写
弾正台
各国公使、重大之事件応接之節、為立合出席可致事
【小学教育施行ノ事】
東京府
今般大学句読所、被止候ニ付テハ、其府ニ於テ小学教育之道、施行可致候事
但、従来之句読所、其侭引移之儀ハ、大学商議之上、取扱可申事
○廿日〈丁巳〉
【孝明天皇御祭典ノ事】
御布告写
来ル廿五日於神祇官孝明天皇御祭典被為行候ニ付、諸官省、集議院、大学、弾正台、皇后宮職、諸使、東京府等、勅任、奏任之内一人、巳ノ刻ヨリ参宮可及事
○
来ル廿五日於神祇官孝明天皇御祭典被為行候ニ付、諸官員参拝、可為勝手事
但、拝参刻限之儀、奏任以上ハ辰ノ刻ヨリ午ノ刻迄、判任以下ハ午ノ刻ヨリ申ノ刻迄ノ事
【義公、烈公ヘ贈従一位宣下ノ事】
御沙汰書写
徳川従四位昭武
其先贈従二位中納言光圀、兵革始息、文教未明之時ニ方リ、首ニ尊王之大義ヲ唱ヘ、君臣ノ名分ヲ正シ、殊ニ心ヲ修史ニ尽シ、以テ千古之廃典ヲ興ス、其功績深ク御追感被為遊、依之贈従一位宣下候事
○徳川従四位昭武
祖父従二位大納言斉昭、祖先光圀之遺旨ヲ継キ、専ラ心ヲ皇室ニ存シ、内ハ綱紀之衰頽ヲ憂ヒ、外ハ辺備之怠弛ヲ患ヒ、自ラ奮テ国家ヲ維持セントス、其忠志深ク御追感被為遊、依之贈従一位宣下候事
宣下状写
天皇
御璽
贈従二位源朝臣光圀
贈従一位
右大臣従一位藤原朝臣実美宣
大弁従三位藤原朝臣俊政奉行
天皇
明治
御璽
二年己巳十二月廿日
○
天皇
御璽
贈従二位源朝臣斉昭
贈従一位
右大臣従一位藤原朝臣実美宣
大弁従三位藤原朝臣俊政奉行
天皇
明治
御璽
二年己巳十二月廿日
【蒲生君平、高山彦九郎御追賞ノ事】
御沙汰書写
蒲生君平
草莽一介之身ヲ以テ、綱紀之衰弛ヲ慨シ、名分之紊壊ヲ憤ス、然レ共時之不可ナル、力ヲ著述ニ専ラニシ、以テ朝廷ヲ尊崇シ、世教ヲ補裨ス、其風ヲ聞テ興起スル者不少、其気節深ク御追賞被為在、依之里門ニ旌表シ、子孫ヘ三人扶持下賜候事
○高山彦九郎
草莽一介之身ヲ以テ、勤王之大義ヲ唱ヘ、天下ヲ跋渉シ、有志之徒ヲ鼓舞ス、世之罔極ニ遭ヒ、終ニ自刃シテ死ス、其風ヲ聞テ興起スル者不少、其気節深ク御追賞被為在、依之里門ニ旌表シ、子孫ヘ三人扶持下賜候事
○宇都宮藩
別紙之通、故蒲生君平ヘ御追賞被仰出候条、於其藩旌表扶持等、取計可申事
○岩鼻県
同文〈蒲生君平ヲ高山彦九郎ニ作リ、藩ヲ県ニ作ル〉
【松平甲次郎献金ノ事】
松平甲次郎
戊辰之歳、賊徒掃攘之砌、献金致候段、神妙之至被思食候旨御沙汰候事
【永平寺、総持寺席順ノ事】
〇永平寺
昨夏御沙汰之筋有之候処、今般御取糾之上其寺総持寺共、本山如故、各其末寺取締違乱無之様可致旨、更ニ被仰出候事
但、永平寺ハ道元開基之祖山タルヲ以テ、席順総持寺之上タルベク、尤両寺之末派互ニ転任、向後差止候事
○総持寺
同上〈其寺ヲ永平寺ニ作ル〉
但、永平寺ハ、道元開基之祖山タルヲ以テ席順総持寺之上タルベク、且其寺従来輪番持之処、向後碩学智識之者ヲ挙ケ、住持タラシムベク候、尤両寺之末派互ニ転任、自今差止候事
〇松平福井知藩事
別紙之通、永平寺ヘ御沙汰相成候間、為心得相達候事
○前田金沢藩知事
別紙之通総持寺ヘ以下同上
【京都兵部省廃止ノ事】
〇兵部省
今般京都兵部省被廃候事
但、京都戍兵管轄之者、取調可申出候事
【佐賀藩卒江藤中弁ヲ要撃ノ事】
昨夜佐賀藩卒六人、江藤中弁ヲ塗ニ要撃セントス、中弁之ヲ拒キ、傷ヲ被ル、依テ左之通御沙汰有之
江藤中弁
其方儀不慮之難ニ遇候段達叡聞、為養生料金百五十両下賜候事
追録
【信長ヘ健織田社ノ神号宣下ノ事】
○十一月十七日
贈従一位太政大臣平信長ヘ、健織田社之神号宣下有之